第三十一回「逃げよ信長」はこちら。
「泣いたことはおありですか」
「ある」
確かに、泣きたいときってあるよね。吐き出したいことがあって、でもそのことが許されないとき(日本の男にはあまり許されない)、泣くことができたらどれだけいいだろう。でも光秀も将軍義昭もそれはできなかった。
そういうことで男たち(もちろん女たちも)は屈折していく。光秀は秀吉とともに損な役回りであるしんがりをつとめて帰って来たのに、評価は思わしくない。
アンシャン・レジーム(旧制度)の代表であるかのような摂津晴門(片岡鶴太郎)に皮肉を言われてしまう。ああいますよね、こういう人は自分に疑問を持っていないものだから強い強い。
光秀は常に惑(まど)っている人だから、声を荒げはするけれども将軍からはスルーされてしまう。ストレスたまるって。でも、妻と子どもがやって来て彼を癒やす。他の登場人物とはそこがちょっと違うあつかい。実際にそうだったんだろうけどその後は……
そして今井宗久を経由して筒井順慶登場。駿河太郎は本当にいい味を出していると思う。お父さんとは違う感じでね。洞ヶ峠を決め込むという意味でネガティブな評価がつきまとう筒井順慶だけど、若い頃に読んだ、子孫であろう筒井康隆がそれに激怒していた。それ系の漫画も自分で描いてました。読んでます。
今井宗久役は陣内孝則。実はこの人ほど大河ドラマに愛されている人もいないんじゃないか。
「独眼竜政宗」で豊臣秀次、「毛利元就」で陶晴賢、「軍師官兵衛」で宇喜多直家、そしてなんといっても「太平記」での佐々木道誉である。
乾いた笑いをイメージしたときに、NHKはファーストチョイスとして彼を選ぶのかもしれない。それ、正解です。今回のウエスタン風のタイトルもつくづくといい。
第三十三回「比叡山に棲む魔物」につづく。
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