事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!09年7月号~通勤の謎PART3

2009-07-18 | 明細書を見ろ!(事務だより)

000002645 PART2はこちら

 距離の測定方法には三種類あるとお伝えしましたが、どの方法にも欠点はあります。

キルビメーターを地図の上で転がす場合
 これ、熟練の技が必要です。地図上の道路をコロコロなぞるわけですから、わずかなズレが大きな差になってしまいます。測定職員のスキルの差が通勤距離に影響するとすれば、これは問題でしょう。

電子地図ソフトを使用する場合
 著作権法上の問題はともかく、市街地はかなり正確でも、田舎の方がどうもおぼつかない傾向があります。しかしちゃんと斜度まで計算基礎に入れているのだとか。

その斜度について、他県の事務職員はこう考察しています。

>>どんなアルゴリズムなんでしょうか。道路の斜度はどこも一様ではないし。単純にコサイン関数で計算してみると、斜度5度で1km当り約4m、10km当り約40m。斜度10度で1km当り約20m、10km当り約190m。斜度15度で1km当り約55m、10km当り約550m等々。平野部ではほとんど気にすることはないと分かりました。(πを3.14としました)

……うわ。三角関数まで出てきた。もうすっかり忘れてるのに。いや、きっと高校を風邪で休んだ日に授業でやったんだろうな。そうだそうだそうに決まった。

③自家用車のトリップメーターで“実測”する場合
 これが、実は大問題なのです。みなさんのクルマの車種にまで影響するお話は来月に

※画像は、あの劔岳の三角点。

09年8月号「年金のお知らせ」につづく。

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「愛を読むひと」The Reader (2008 ショウゲート)

2009-07-17 | 洋画

Thereaderposter02 1958年、西ドイツ。15歳のマイケルは、美しい年上の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋におちる。マイケルは毎日のようにハンナの部屋に通い、二人は激しく求め合った。

やがてハンナは彼に本の朗読を頼み、それが二人の愛し合う前の儀式となる。チェーホフ、ヘミングウェイ、カフカ……ハンナを喜ばせたい一心で読み聞かせた名作の数々、全てが輝いて見えた一泊の自転車旅行──マイケルは初めての大人の恋にのめりこんでいくが、ある日突然、ハンナは姿を消してしまう。

 原作「朗読者」は日本でもバカ売れし、この映画の公開でふたたび文庫がベストセラーになっている。もしも映画を観てから読みたくなったとすれば、それはわたしにも納得できる話だ。なぜなら、マイケルがとったある行動(正確に言うととらなかった行動)を心の中で処理するのは、映画の上映時間内ではむずかしかったから。

 ミステリとしての「朗読者」における“謎”は、映画では観客が早い時点で推測できる造りになっている。問題は、ハンナの贖罪のためにその謎をマイケルはなぜ解いて見せないのか。これにつきる。

 このあたりが、ドイツにおいてナチズムの幻影がいまだに大きいことを理解していないとなかなか。簡単に感動させたりはしないぞ、という作り手の志がうかがえてうれしい。

 主人公はそのために苦い思いのまま生き続けなければならず、ひとりの女性の物語を、今度は心の通わなかった自分の娘に、ふたたび“語り”始めることでようやく救われる。この構図はうまい。

 ケイト・ウィンスレットは「タイタニック」のときから盛大に脱いでくれるのでお気に入り。でもこの作品ではほとんどずーっと全裸ですごしている。気合い入ってるなー。

 確かに構えとしては(例えが古いけど)「青い体験」「個人教授」のような“年上の女性がセックスの手ほどきをする”黄金パターンであり、その女性が消えてしまう「おもいでの夏」のような甘いストーリーでもある。しかし中身がこれだけ苦いと、コーティングのためにも激しいファックシーンは必要だったんだな、と納得。

 共演者たちにオスカーをとらせる名人であるレイフ・ファインズ(彼自身は受賞していない)がひたすらうまいです。朗読の味わいなど、さすがシェイクスピア役者。お子様たちは「ハリー・ポッター」のヴォルデモートが彼だなどと気づきもしないだろうが。

 さて、マイケルがハンナに朗読する作品は以下のとおり。作品の選択が、愛なのね。

・「ハックルベリー・フィンの冒険」…マーク・トゥエイン

・「アナトール」…アルトゥール・シュニッツラー

・「デイヴィッド・コパフィールド」…チャールズ・ディケンズ

・「ドクトル・ジバゴ」…ボリス・パステルナーク

・「East Coker」「Four Quarters」…T・S・エリオット

・「エミリア・ガロッティ」…ゴットホルト・エフライム・レッシング

・「エポーデス」…ホラティウス

・「たくらみと恋」…フリードリヒ・シラー

・「ジョーズ」…ピーター・ベンチリー

・「チャタレイ夫人の恋人」…D・H・ロレンス

・「犬を連れた奥さん」…アントン・チェーホフ

・「変身」…フランツ・カフカ

・「オデュッセイア」…ホメロス

・「骨董屋」 チャールズ・ディケンズ

・「老人と海」…アーネスト・ヘミングウェイ

・「タンタンの冒険旅行 ななつの水晶球」…エルジェ

・「To an Army Wife, in Sardis」…サッフォー

・「昨日の世界」…シュテファン・ツヴァイク

ある不幸がなかったら、物語好きの、真面目で気のいい女性だったかもしれないハンナに、マイケルは朗読を続けるが……。傑作です。ぜひ。

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「耳をふさいで夜を走る」石持浅海著 徳間書店刊

2009-07-16 | ミステリ

51xyf9azk0l 三人の人間を殺す。完璧な準備を整え、自らには一切の嫌疑がかからないような殺害計画で。
標的はいずれ劣らぬ若き美女たち。「破滅」を避けるためには、彼女たちを殺すしかない…しかし、事態は思わぬ方向に転がりはじめる…。

またまたやってます石持!連続殺人犯の方を被害者に仕立てる無理矢理さ。なぜ主人公は3人の女性を殺さなければならないのか、殺人をくりかえすうちに追いつめられている過程がスリリング……というよりかなり笑える。

殺人とセックスの境目に徹底的にこだわるあたりも(掲載誌→『問題小説』へのサービスもあるのだろうが)石持らしい。タイトルが意味深。

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都議選

2009-07-14 | ニュース

都議選の結果にはいろいろと考えるところがある。

中選挙区的な選挙だからこんなものですんだが、このまま総選挙になだれ込めば、民主党の圧勝となることは自明だ。わたしは能天気にそれを喜ぶ気持ちには(今回は)なれなかった。冷静になれ。民主党に投票したんじゃなくて、主人公はまだまだ自民党で、彼らを“こらしめてやった”と思っている人が多数なのだと思う。

それはともかく、55%の投票率でこの結果。大都市で70%越えはないだろうけれど、もし実現していたらどんなことになっていただろう。

いや、選挙に行かない人がなんでこんなに多いんだと嘆いているわけではない(呆れてはいる)。“総力をあげた”と自他共に認める某党のことがどうにも不思議なのだ。

総力をあげることであの議席を確保することができるということがまず不思議。
そして、“都議選から少なくとも一ヶ月半”は間隔をあけてほしいという物理的な要求があることも不思議。
ほんとに、よくわからない。

別にZ票がどうしたのといった政治くさい話をしたいわけでもない。わたしは投票日の日曜日に見かけた、ある団体の姿に感じ入ったのだ。

彼らは、まさしく“白亜の殿堂”としか形容のできない教会?を出て、近所をデモ行進していた。すべての選挙区に候補者をたてるという教祖の方針に諾々としたがっている……にしてはみんな明るい。

そして、みんな驚くほど“普通”なのだった。

わたしはこの団体の掲げる国家主義的主張は受けつけない。しかし教祖の普通さと通底する信者たちの明るさを見て、少し緊張したのは確かだ。

選挙に行かない人たちの多くは、政治ずぶずぶの人間たちを軽蔑しているのだろう。

「自分の一票なんて何の影響もない」

「誰がやっても政治は同じ」

「政治は年寄りのもの」

「自分は汚れていない」

……みんな、当たってます。そのとおりですとも。

でも、そのうちに「普通の笑顔の持ち主」や、全力をつくせば議会の1/5を占めるような団体がわたしたちのすべてを決定することになるのではないかという危惧だけは、もっていてほしい。

そうなってから「社会が悪い」「政治が悪い」「カルトが悪い」とか言うなよ。絶対に言うな。“彼ら”には、悪意のかけらもない。責任は、自分がとらなければならないはず。

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「ターミネーター4」Terminator Salvation (2009 SONY)

2009-07-13 | 洋画

T600 「ターミネーター」1作目はふたりのスターを生み出した。ひとりはもちろん現カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーであり、もうひとりは監督のジェームズ・キャメロンだ。今では考えられないことだが、ふたりとも金に困ったB級の存在だったのに。

もっと正確にいうと、1作目のあのラストシークェンス、表皮や肉がこそげ落ち、金属がむき出しになってもなお追いかけてくるターミネーターの怖さが、シリーズを“金が稼げる”存在に押し上げたわけだ。あのシーンにはわたしも笑ったなあ。

 キャメロンはその後「エイリアン2」でますます名をあげ、続篇「ターミネーター2」に着手する。製作費なんと1億ドル。どれだけ期待されていたかの証左。そして出来上がったのがあの名作だから文句なし。大バクチで製作費をたれ流した「タイタニック」を20世紀FOXが笑って許した(わけでもないだろうが)のもうなずける。液体金属ロボットT-1000は衝撃的だった。

 キャメロンが降板した「ターミネーター3」は数段落ちる出来。このあたりはやはり3作目で急降下した「エイリアン」と同じ構図。女性ターミネーターが、殺戮のかぎりをつくす直前に鏡に向かってちょっと顔を直すあたりのシーンしか印象にない。シュワルツェネッガーは単なるでくの坊だったし。

で、「4」。ターミネーターサーガの「2」の直系の続篇。主役のクリスチャン・ベールは「バットマン」と「ターミネーター」のかけもちでお忙しいことだが、主役はほとんど死刑囚役のサム・ワーシントン(シュワルツェネッガーにとてもよく似ている)だ。

よく見ると美人でもなんでもないブライス・ダラス・ハワードが救世主ジョン・コナーの奥さん。で、妊婦役なのでふっくらしている……のか?実は物理的にふくよかになったのでしょうがなかったんじゃないのかなあ(笑)。

いきなり死刑執行のシーンから始まることでもわかるように、今回はかなり暗いストーリー。「PLUTO」を読んだばかりだからか、ロボットのアイデンティティとは何かというテーマはしっくりくる。

しかしどうにも理屈ばかりが先行し、活劇としての面白さが二の次になったのではないかとも思う。悪くはないけどね。「いつも派手なアクションばっかり撮ってるわけじゃねーぜ」と監督のマックGは主張したかったのかもしれない。はたして、彼の目論見どおり5作目はあるだろうか。あったとしてそれは彼にまかせられるのか?

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「ソリューション・ゲーム 日常業務の謎」伊園旬著 宝島社刊

2009-07-12 | ミステリ

捜索、隠蔽、偽装、各種工作請け負います  IT企業版「スパイ大作戦」!

ブレイクスルー・トライアル」につづき、危機管理をネタにかましまくってます。親会社のトラブル解決をアウトソーシングされた子会社という設定は笑える。いかにもありそう。

しかし最後のところで(たとえば景山民夫の「トラブルバスター」のようには)読後感が爽快といかないあたりも「ブレイクスルー・トライアル」そのまんまなのである。でも好き。この作家の作品はもっと読んでいこう。

Solutiongame

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「PLUTO」完結

2009-07-11 | アニメ・コミック・ゲーム

Pluto08  長期連載ついに完結。誰にとっても、この「PLUTO(プルートウ)」でもっとも印象的なのは第一巻のラスト、鉄腕アトムの登場シーンだろうと思う。日本を訪れた刑事ロボット、ゲジヒトは雨の中をやってくる“普通の少年”(髪の毛はフードで隠されている)に声をかける。

「君が……アトムくんだね?」

 手塚治虫の名作を浦沢直樹が戦略的にリメイクした「PLUTO」は、しかしこの場面にさまざまな仕掛けをほどこしている。サッカーボールを蹴りながら仲良く下校する人間の少年たちの後を、アトムは独りさびしく歩いている。道ばたのカタツムリに好奇心をむき出しにするアトムに、同じように高レベルなロボットであるゲジヒトは内心たじろぐ。これが、ロボットなのかと。

 つまりわずか数ページに、人間に疎外される存在としての少年ロボットと、生物を慈しむことすら会得し、人間との境界線すらあやうくなっている高機能ロボットのアトムという両面を描写しつくしているのだ。

 アトムは出生からして哀しい。天才科学者天馬博士の一人息子、トビオの代替物としてつくられ、あまりにも優等生だったために疎んじられる……。10万馬力相当の身体に100万馬力を注入し、人工頭脳に60億人分の人格を付与したために“目覚めなくなってしまう”あたり、うまい脚色だ。オリジナルの手塚バージョンは、ちょっと(でもないか)調子が狂うぐらいなのだが。

 浦沢直樹の語り口はますます絶好調。兵器としてつくられ、多くの同胞を破壊したトラウマをかかえながら、ピアノを習得しようとするノース2号の挿話など、彼がプルートウに破壊される場面が描かれないからこそ泣ける。

7体の高性能ロボットはなんのために破壊されなければならなかったか。アメリカのイラク攻撃とからめながら、最終的な“敵”に合衆国のアルティメットコンピュータ(テディベアの姿をしているのでDr.ルーズベルトと呼ばれている)を設定し、仮想敵だったプルートウとボラーの哀しみを増幅させてもいる。

もっとも不気味で、ロボット三原則がありつつ『殺人を行ったことがある唯一の(と思われていた)ロボット』ブラウ1589が、最後にアトムに……くーっ、うまい。柳生烈堂と大五郎の関係みたい(あ、ネタバレ)。もう一回最初っから読まなきゃあ。全8巻を豪華版で買っといてよかったよー。

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「決壊(上・下)」 平野啓一郎著 新潮社刊

2009-07-10 | 本と雑誌

Kekkai1and2 2002年10月、全国で次々と犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。被害者は平凡な家庭を営む会社員沢野良介。事件当夜、良介はエリート公務員である兄・崇と大阪で会っていたはずだったが―。絶望的な事件を描いて読む者に“幸福”と“哀しみ”の意味を問う衝撃作。

熱にうなされるようにして一気呵成に読む。というより、一気呵成でないとはじき返されそうだった。自分の言葉(明晰きわまりないのだが)に自分で信頼がおけず、不安をかかえる主人公。

この公務員(国会図書館勤務)が実に魅力的で、だからこそ“あのラスト”はもうちょっとどうにかならなかったかと思う。弟の妻との関係など、明晰な人間であるがゆえのスタンスのとり方で、なるほどなぁと唸るぐらいだったのに。

ネットを介してしかコミュニケートできない夫婦、殺人の連鎖をネットで企図する“悪魔”、自分の人生に誇りをもてなくなった老齢の働き蜂、「息子を殺された」ことで次第に壊れていく母親、そして「息子が殺人犯となった」ことで壊れていく母親……平野はこれ以上ないくらい微細に、そして説得力あふれる筆致で(自在に視点を変えながら)登場人物たちを描く。

特に鋭いのは、新聞・ネット・ワイドショーなどの“語り手”そのものに平野が変貌するかのような文体。優秀な文学者は、常にするどい政治意識をもつのか、あるいは冷徹な歴史観を持つが故に現代をまるごと描写できるのか。

読者に、自分が殺人者であるかもしれないと想像させるレベル。傑作。

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港座通信~ファインディング・ニモ

2009-07-09 | 港座

Findingnemop 「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」特集はこちら

監督:アンドリュー・スタントン 日本語版吹替:木梨憲武 室井滋

 流麗なCGばかりが注目されるピクサーのアニメーション。この作品でも、当時はタブー視されていた“水”をみごとに表現しています。

 しかしもっとも時間をかけているのはストーリーを練りあげる段階だと言われています。「トイ・ストーリー」にしても「モンスターズ・インク」「Mr.インクレディブル」にしても、観客によろこんでもらえるストーリー展開を求めてスタッフは七転八倒。「ニモ」においても“母親の不在”を不自然に感じさせない工夫が満載。『記憶が長持ちしない』ドリーを吹き替えた室井滋がひたすら笑わせてくれます。

※ニモはオトナこそが喜べる映画なのではないだろうか。例の鮫の集会のシーンは、マット・スカダーでおなじみのアルコール依存症患者のAAと呼ばれる相互治療のパロディなのだ。そんなもん子どもにわかるわけないよなー。

※それに、記憶が長続きしないドリーの扱いもよく考えたらすごい。映画ファンは「メメント」や「博士の愛した数式」でおなじみの症状だけど、あれを子ども向けアニメのストーリーに組み込もうとする志は高い。ピクサーおそるべし。

※いちばん驚いたのは、ピクサーの作品のほとんどは、若きクリエイターたちが会社をはじめるときのランチ・ミーティングで既に語られていたネタだったことだ。「トイ・ストーリー」はもちろん、「Mr.インクレディブル」も「カーズ」も「ウォーリー」(は定かじゃないけど)も、既定の路線だったわけ。つまり、こんな映画がつくりたいから会社をはじめる、というまっとうな姿勢が理解できる。彼らが、遺産を食いつぶすしかなかったディズニーを(結果的に)支配下においたのは必然だったのだろう。

次回はおくりびと」予告!

港座オフィシャルブログはこちら↓

http://minatoza.exblog.jp/

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港座通信~男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

2009-07-08 | 港座

Torasan171 好評のうちに幕を閉じた港座復活祭。たくさんの方々にお出でいただき、ほんとうにありがとうございました。ひきつづいてお送りする第二弾のタイムテーブルは表のとおりです。
はっきり言って今回は「男はつらいよ」がメイン。上映館はすべて大劇場です。

7月24日(金)

13:00 ローマの休日

16:00 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

19:00 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

7月25日(土)

13:00 ファインディング・ニモ

16:00 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

19:00 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

港座の復活では、邦画封切館でもあった関係から、寅さんをぜひとも上映したいと考えていました(来月で第一作封切りから40周年!)。しかし興行という世界はなかなか微妙で、多方面からの協力が必要。今回、なんとか条件をクリアして上映にこぎつけることができました。それでは作品ごとに解説を。

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(‘76 松竹)

監督:山田洋次 出演:渥美清 倍賞千恵子 宇野重吉 太地喜和子 寺尾聰 岡田嘉子

Torasan172  全部で47作ある「男はつらいよ」シリーズの第17作目。初期の「男はつらいよ」においては、渥美清のアドリブのすごさに共演者が笑いをこらえるのに苦労したと言われています。特に1作目や2作目などは、倍賞千恵子の背中がふるえているのがわかるほど。

浅草でデビュー後、胸を病んで休業せざるをえなかった渥美清は、病院で同室の患者が死んでいくのを数多く見送り、自らも片肺になります。そんな過去が、共演者を喰ってまで笑いをとろうとした姿勢につながったのでしょう。しかし円熟期の「夕焼け小焼け」においては、芸達者な宇野重吉や太地喜和子との共演を楽しんでいるかのようです。そんな余裕が、シリーズ最高傑作に推す人が多い結果につながりました。

特に、おきゃんで明るい芸者を演じた太地喜和子がすばらしい演技を見せています。「男はつらいよ」におけるマドンナは、浅丘ルリ子のリリーがまず思い浮かびます。「寅次郎忘れな草」「寅次郎相合い傘」などで、“寅次郎を本気にさせたただひとりの女性”ですし。しかし今回の太地喜和子は、そのリリーに匹敵します。

「男はつらいよ」においては、寅次郎が旅に出る→妹のさくらがそれを見送る、というパターンが多いため、ラストには常に哀愁が。ところが、この作品にかぎっては底抜けに明るいハッピーエンドになっています。これは太地喜和子のおかげでしょう。彼女の事故死がなかったら日本の芸能界は……と思わずにはいられません。数多い「男はつらいよ」のマドンナのなかで、すでに亡くなっているのは彼女と新珠三千代だけです。

次回は「ファインディング・ニモ」特集。

※「男はつらいよ」の上映については、やはり松竹は寅さんをトラの子(シャレじゃなくて)だと大事にしているのだろう。商業上映にはかなり神経質になっているのだった。

※そのために山形フォーラムに協力してもらえることになったのはうれしい。理想形はやっぱりフォーラムだもの。いい映画を上映し、それをいい観客が支えているもんなあ。山形に行くたびにうらやましく思っていたのだった。

港座公式ブログはこちら↓

http://minatoza.exblog.jp/

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