PART3「今宵、フィッツジェラルド劇場で」はこちら。
実はこのシリーズ、PART3で終えようと思っていたんだけど、あまりにアルトマンがすばらしいのでやめられなくなった。しばらく、おつき合いください。
今回特集するのは「ザ・プレイヤー」The Player。タイトルが意味するのは映画界の実力者のこと。定冠詞つきの「遊ぶ人」が映画人の生殺与奪の権を握るプロデューサーを意味するあたり、いかにもハリウッド。どのくらいの力をもっているかというと
「ぼくがイエスと言うと、ジャック・ニコルソンとスキーをする夢が現実になる」
ほどなのである。
ティム・ロビンスが演ずるそのザ・プレイヤーに、脅迫状が送りつけられる。脚本をボツにした若者のしわざと考えた彼は、その脚本家に接触をはかり、誤って殺してしまう。脚本家の恋人(グレタ・スカッキがかわいい)に心の安寧を求めた彼は、ライバル(20世紀フォックスからヘッドハンティングされた設定)を蹴落とすために“絶対にヒットしない脚本”を押しつけることに成功する。しかし……
カメラは撮影所を縦横無尽にかけめぐる。「近ごろの映画はカット!カット!カット!の連続だ」と登場人物に批判的に語らせているだけあって、オープニングはなんと8分2秒におよぶ長回し。実験映画じゃないんだから(笑)。相米慎二だってここまではやらない。
一時期、アルトマンを徹底的に無視したハリウッドのことを、冷たいタッチで描くのは無理からぬことかもしれない。出てくる企画は
「『愛と哀しみの果て』(Out of Africa)と『ブッシュマン』を組み合わせたらどうだろう」
「『卒業PART2』はうけるはずだ。あの三人(ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト)はまだ生きてるし」
もっとも、この提案をするのが「卒業」を書いたバック・ヘンリーであるあたりが笑わせてくれる。大方の評価は、拝金主義のハリウッドを批判した作品ということになっているが、しかしこのようにアルトマンはハリウッドそれ自体の奇矯さを(苦笑しながらも)愛しているのではないかと思う。もちろん、アルトマンの芸はその苦笑ぶりにあるわけで……
あーやっぱり終わらなかった。以下次号。