事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「水谷豊自伝」水谷豊&松田美智子著 新潮社

2024-01-24 | 芸能ネタ

ルポライターの松田美智子による聞き書き。つまり松田優作の元の奥さんが、優作と親交のあった水谷の来し方について語りあったわけだ。「探偵物語」での、ライターの火を最大にしている工藤(優作)に「東京の人はみんなこうなんですか」とからんだシーンには笑ったなあ。

劇団ひまわり出身で、「傷だらけの天使」で人気が出て、「青春の殺人者」(長谷川和彦監督)でキネ旬主演男優賞を史上最年少で獲得。熱中時代で驚異の高視聴率、そして「相棒」の杉下右京という当たり役を……こんな順調な芸能生活もないはずなのに、彼はいつも芸能界から身を引くことを考えているようだ。

1968年、手塚治虫原作の「バンパイヤ」(見てましたよ!)で主役の狼男を演じて以降、常に「ここは自分のいる場所じゃない」と感じていたとか。しかし彼の徹底した愛されキャラによって、多くの理解者が彼を支えてきたことに感謝もしているのだった。

それから、余計なことですけれど「熱中時代・刑事編」で共演し、のちに結婚した(そして離婚した)ミッキー・マッケンジーのことがわたしは大好きでした。

「だいじょうぶかミッキー!」

「はぁいい、だいじょうび」

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「あきれたあきれた大作戦」The In-Laws(1979 WB)

2024-01-24 | 洋画

自分の娘と結婚する男の父親が、とんでもない存在だった悲喜劇(笑)。歯医者として成功しているアラン・アーキンが、CIAを自称するピーター・フォークにふりまわされる。

かなり無理のある設定だけど、前半のニューヨークと、後半の南国の対比がいい。監督はなんと「ある愛の詩」のアーサー・ヒラー。

70年代後半から80年代にかけて、コロンボ役以外のピーター・フォークの映画はほぼすべて見ていました。大好き。ああ、アラン・アーキンも去年亡くなっていたのか。

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「ともぐい」河崎秋子著 新潮社

2024-01-23 | 本と雑誌

明治後期の北海道。狩猟によって生きている熊爪という男が、すでに人を屠っている熊と激突する。そしてタイトルが「ともぐい」

……となれば、獣のように生きる男と、神性すらおびる熊の、共食いの話だと誰だって思う。いや実際に熊と男の駆け引き、殺し合いは息詰まる圧倒的な描写の連続で、そこだけでもみごとな小説だと思う。でも、後半は思いもよらない展開を見せる。

「釧路の近くに、白糠ってとこはある?」

妻は釧路から酒田に来たのだ。

「あるわよ。お姉ちゃんの初任地がその近く」

高校教師だった義姉がそこにいたのか。

「不便なところでねえ」

熊爪が住むのは、その白糠からも離れた山中。

日露戦争直前のその地域は、次第に産業構造が変化しているのだが、それに気づかずにいる人物も登場し、味わい深い。そして、盲目の女性が現れ……

誰もが驚くラストだと思う。共食いの果てに、最後に生き残る存在がすばらしい。直木賞は当然だったでしょう。

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「シティヒート」City Heat(1984 WB)

2024-01-23 | 洋画

クリント・イーストウッドバート・レイノルズが主演。当時、この二人はマネーメイクのトップを争っていたので、文字通り夢の競演だったのである。にしてはけっこうゆるいつくりなのだけれど、イーストウッドとレイノルズが刑事と元刑事をやってくれているだけでありがた感はあります。

当時の批評で、印象とは反対にイーストウッドは子どもっぽく、レイノルズは渋好みではないかというのがあって(それぞれが主演して監督した「ガントレット」と「シャーキーズ・マシーン」を比較すればいいと思う)なるほどと思わされた。

この映画でもすぐにブチ切れてしまうイーストウッドと、女性にクールなレイノルズの組み合わせがいい感じだ。

今年最初に観たDVDがこれでした。お正月にぴったり。

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「光る君へ」 第3回「謎の男」

2024-01-22 | 大河ドラマ

第2回「めぐりあい」はこちら

ああ、歴史知らずなものだから恐れていた事態が。あまりにも藤原だらけで誰が誰やら(笑)。そこは脚本も承知の上のようで、キャラを過剰なまでに濃く描いている。

今のところダントツに腹黒いのは右大臣の兼家(段田安則)。まひろ(吉高由里子)の母(国仲涼子)を惨殺した狂犬、道兼(玉置玲央)を使って時の天皇を毒で弱らせ、ライバルである左大臣、源雅信(益岡徹)の動向を探るためにまひろをスパイに仕立てる……あ、ようやく理解できるようになりました。

まひろが送りこまれたのは左大臣の妻(石野真子)が主催するサロン。偏継ぎと呼ばれる漢字当てカルタのようなもの。まひろはここで空気を読まずに札を全部とってしまう。それを見てほほ笑むのが源倫子(黒木華)という流れ。

「あら、この二人(吉高と黒木)は朝ドラで共演してたのよ」と妻。「花子とアン」では姉妹だったらしい。

で、この偏継ぎでできる漢字が「日」に「月」で「明」、「言」に「寺」で「詩」などはいいけれども「谷」に「欠」で「欲」というような、後の展開を想像させる漢字もあって周到です。

「コメディアンの人がいっぱい出てるのねえ」

そういえばそうだ。ロバートの秋山竜次、はんにゃの金田哲、三遊亭小遊三、矢部太郎など。そして毛ほどもコント芝居に見えないあたりがすばらしい。

とか知ったふうなことを言っていますが、直前に見ていた堂本剛版の「金田一少年の事件簿」に、おー吉高由里子が出てるとは、と驚いていたら若いころの三浦理恵子でした。なんもわかっちゃいませんわたし。

第4回につづく

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「深作欣二」(KAWADEムック 文藝別冊)」 春日太一責任編集 河出書房新社

2024-01-20 | 芸能ネタ

映画監督、深作欣二をめぐるムック本。

仁義なき戦い」「仁義の墓場」などの代表作はもちろん、失敗作という評価が定着している「復活の日」(原作小松左京オリビア・ハッセーが出ています)「宇宙からのメッセージ」(スターウォーズの日本公開がだいぶ遅れたので、そのあいだにひと稼ぎしようと東映は考えたのだった)のような作品もきちんと紹介されている。

深作といえば有名なのは、撮影が深夜に及び、役者もスタッフもへとへとになることだ。それだけ、彼は粘りまくる。おそらく働き方改革がすすんでいる(らしい)現代の映画界ではありえない撮影法だろう。

それに、作品のためなら多少の犠牲は仕方がないと考えていたらしい。たとえば、「魔界転生」のラストの炎上シーンなど、その熱さはたいへんなものだったとか。

検証のために見てみました。うわー、これ特殊撮影じゃなかったのか。あまりの熱さに逃げ出した役者もいたらしいが

「歌手(天草四郎役の沢田研二)ががんばってるのに役者が逃げてどうする!」

無茶しますフカサク。

彼が亡くなってからだいぶ経つ。関係者は露骨にフカサクと松坂慶子荻野目慶子の……えーと、そういうことを証言している。もう、そのあたりはあけすけに語ってもいい頃合いだということなんですかね。

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明細書を見ろ!2024年1月号 眼を開く

2024-01-19 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Amazon.co.jp: 地雷グリコ : 青崎 有吾: 本

2023年差額号「NYでラーメンを。」はこちら

奇書「ドグラ・マグラ」などで知られる夢野久作に「眼を開く」という短篇があります。

隠遁し、山奥の空き家に住み着いた作家。そこへ毎日郵便を届ける中年の配達人。彼は一日たりとも配達を休むことはなかった。しかし、三日ほど彼が来ないことに気づく。住民たちは、郵便物を持ち逃げしたのではないかと疑う。胸騒ぎがした作家は吹雪のなかを捜しに行き、荷物を抱えたまま凍死していた配達人を見つける。

「その死顔には何等の苦悶のあとも無く、あの人相の悪い、頑固一徹な感じは、真白い雪の中に吸い取られてしまったのであろう。あとかたもなく消え失せて、代りにあの国宝の仏像の唇に見るような、この世ならぬ微笑が、なごやかに浮かみ漂うているのであった。」

郵便配達人の誇りがうかがえる、みごとな作品でした。

その、郵便がピンチです。

日本郵便は今年の秋をめどに、定形郵便物の料金、84円(25g以下)94円(50g以下)を110円に値上げする方針。はがきも63円から85円にすると。その理由として

・郵便物の数がピーク時の263億から144億とほぼ半減している

・郵便事業の3/4を占める人件費が上昇する

・配達に使うクルマやバイクの燃料費が高騰している

ということで、4年後には事業全体で3000億円もの赤字となる見込み。しかし、値上げしたとしても2026年度には赤字になる予想なので、再値上げもありうるというのです。

自分の生活にあてはめてみるとよくわかります。郵便事業でもっとも利幅が大きいと予測されるのは年賀状でしょうか。一気に大量に届くあの存在が重要だったはずなのに、わたしは一枚も出さなくなってしまいました。SNSの浸透はこれからもつづくでしょうから、その意味で郵便はお先真っ暗です。

自治会長として(笑)、地元のコミュニティ振興会の新年会に出席してきました。で、来賓席には市長、市議、小学校長などと並び、郵便局長がいます。必ずいます。

これはどういうことかというと、歴史的経緯があります。

郵便事業がスタートしたころ、財政がきびしかった明治政府は、地元の名士(かつての庄屋や名主など)から土地と建物の一部を無償で提供してもらい、その代わりに彼らを「郵便取扱役」に任命したのです。だから一般的に郵便局長というのは偉い人、というイメージが今も続いているというわけ。

その郵便局は日本全体で2万4千ほど存在します。金融機関としてカウントすると、その多さが際立ちます。たとえば、酒田と遊佐を見てみると支店の数は

・Y銀行 4

・S銀行 5

・K銀行 2

・JA     8

・R金庫 1

・T信金 3

それに比べて郵便局は52もあるのです(某校事務職員調べ)。

どんな地域にも等しく便益を提供するユニバーサルサービスにおいて、誇り高き郵便局はかかせないものですが、はたしてこれからどうなっていくのか。そして、眼を見開けばその姿こそ公立小中学校の未来予想図ではないかと。

本日の1冊は「地雷グリコ青崎有吾著 KADOKAWA

抱腹絶倒のミステリ。なにしろネタが子どもの遊びなのである。表題作はあの「グリコ・チヨコレイト・パイナツプル」のグリコじゃんけん。他にもだるまさんがころんだ、神経衰弱など。異様に勝負強い女子高生が、偶然を排し、徹底して考え抜いて勝ち抜いていく。裏の裏の裏をかく姿勢がたのもしい。

2024年2月号「寒冷地手当」につづく

 

 

 

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第170回芥川賞と直木賞を予想する 答え合わせ篇

2024-01-18 | 本と雑誌

予想篇はこちら

さて、芥川賞はかすりもしませんでしたが直木賞は

ともぐい

八月の御所グラウンド

の二作が受賞してうれしいうれしい。

「でも『八月』はともかく、『ともぐい』はうちの図書室には入れられないかも」

「中学生向きじゃないですか」と司書。

今読んでるんだけど、向かないよね中学生には(笑)。めちゃめちゃ面白いけれども。

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「信長の原理」垣根涼介著 角川文庫

2024-01-17 | 本と雑誌

「光秀の定理」はこちら

信長が蟻の行動をじっと見つめている。彼は気づく。一生懸命に働いているのは2割。6割はおつきあい程度。そして2割はさぼっている。これは人間の世界にも言えて、働き者だけを集めても、やはり2割は力を出せないようになっていく……

パワハラの塊であるかのような信長に、必死で食らいついていく明智光秀や秀吉ら家来たち。しかし、どうしても落伍していく者は出てくる。そして家来たちは戦慄する。次にはじき出されるのは自分ではないかと。

蟻の論理を気づいていたのが、信長以外は秀吉だけだったあたりの凄み。

主人公が信長だから、魅力的な人物のようにある程度描いてはいる。だけれども、わたしはやっぱりこんな上司の下では働きたくないのでした。評価制度?勘弁してくれよ。

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第170回芥川賞と直木賞を予想する

2024-01-16 | 本と雑誌

第169回はこちら

無責任な芥川賞と直木賞の例によって予想をやっちゃいましょう。

今回の芥川賞のノミニー

「迷彩色の男」安堂ホセ著 河出書房新社 文藝秋季号

「Blue」川野芽生著 集英社 すばる八月号

「東京都同情塔」九段理江著 新潮社 新潮十二月号

「猿の戴冠式」小砂川チト著 講談社 群像十二月号

「アイスネルワイゼン」三木三奈著 文藝春秋 文學界十月号

直木賞のノミニーはこちら。

「なれのはて」加藤シゲアキ著 講談社

「ともぐい」川﨑秋子著 新潮社

「襷がけの二人」嶋津輝著 文藝春秋

「八月の御所グラウンド」万城目学著 文藝春秋

「ラウリ・クースクを探して」宮内悠介著 朝日新聞出版

「まいまいつぶろ」村木嵐著 幻冬舎

ってことで芥川賞の方はひとつも読んでいないけれども安室ホセの一点買い。小砂川チトもありかな。

直木賞は万城目学のファンなので「八月の御所グラウンド」にしたいんだけど河崎秋子の「ともぐい」に持ってかれそうだなあ。万城目のは薄味なんでそこを評価して欲しいんだけど、この「ともぐい」は今読んでいるんだけどとにかく濃いんです。

発表は明日か。

このご時世に、ジャニーズ事務所の加藤シゲアキを選考委員たちが選んだとしたら、それはそれでいい話だろうとは思う。いや本気で。

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