ここに四つの茶碗があります。そのなかのひとつに石をいれて、どれに入っているかを当てる賭博が開陳されます。順序は以下の通り。
1 親が子に茶碗を選ばせる
2 石が入っていない二つの茶碗を除く
3 残った茶碗のうち、最初に選択した茶碗と、もうひとつの茶碗のどちらに石が入っているかを選ばせる
……まず、石が入っている茶碗を最初に当てる確率はもちろん1/4です。しかし二つになった時点で確率は1/2になるので、どちらを選んでも確率は1/2に跳ね上がる、と誰だって思います。ところが、長丁場になるとほぼ確実に親の方が勝つことになり、その勝率は7割を超える。それはなぜか。
……こんな魅力的な謎を中心にすえて、明智光秀の半生が描かれる。もちろんわたしたちは本能寺の変のことを知っているし、その後に光秀がどうなったかも知っている。だから明るいお話になりようがないはずなのに、読後感はとてもさわやか。読んでよかった。
「信長の原理」につづく。