直木賞専門家かと思われた川口さんの、しかし圧倒的に面白い芥川賞クロニクル。資料としても、候補作と審査員が全部載っているのでそれだけでも面白い。なぜ村上春樹が芥川賞をとれなかったかは、審査員の変遷を見ているだけで理解できる。
で、純文学が芥川賞でそれ以外が直木賞ってくくりはわたしはいいと思うのよ。でも、芥川賞の方がちょっと上ってくくりがどうもなあ。川口さんはもちろんそこを怒っています。
え、今これ文春文庫から出てるの(笑)
どうする家康 最終回「神の君へ」はこちら。
始まってしまった。2024年の大河の主人公は紫式部。
最初に断っておきます。わたしは高校の時の古文や漢文の時間は苦痛でしかなかった。教えてくれた教師たちは、今思えばとても味のある人たちで、特に漢文の教師は結構なサヨクでもあったらしく、彼のコメントは確かに面白かったんだけど、教科書に載っているテキストにはまったく興がそそられなかった。五言絶句とか、面白かったんですかあれ。
この時点でわたしがおさえているのはこの三点。
・紫式部が書いたのは「源氏物語」
・清少納言は「枕草子」
・藤原道長はもんのすごく権力があった
これだけ。中学生か。
だからこの大河を観るのはどうもモチベーションが高まらない。発表されたキャストも地味じゃないですか失礼だけど。
脚本は大石静。「長男の嫁」「ふたりっ子」「セカンドバージン」の人である。大河では「功名が辻」。きっと濃いホームドラマになるのであろうと予想。さあ見てみました。
あ、と思いました。
意図的に、“昔の大河ドラマ”を志向しているのであろうことが歴然。近年はセット撮影から離れよう離れようとしていたようだけど、時代背景もあってロケを最小限にしているみたい。
しかし気概は感じられて、キャストのトップは「落井実結子」という、きっと誰も知らない人です。子役である彼女が紫式部の少女時代を演ずることを尊重。天皇の描き方とか、興味深くはある。来週も見ます。
32章「エリザベス」はこちら。
あの「ベン・ハー」のリメイク。というかあの物語は小説がもとになっていて、チャールトン・ヘストン版以前にも何度か映画化されています。
まあ、リメイクしようとした気持ちはわかります。あの戦車競走は今ならCGで簡単につくれるんじゃないかとか、モブシーンも安価に実現できるはずだとか。それは事実なのだろうけれども、そのあたりは観客に簡単に見透かされる結果となったか日本では劇場公開なし。
でも、やっぱり史劇としてこのお話はよくできている。キリストやピエトもペテロも出てきます。
ユダヤ人のお話ではあるけれど、モーガン・フリーマンの受けの芝居がいい。
わたしは思う。イエス・キリストとはこの作品に登場するような、“普通にいい人”だったんじゃないかと。普通だったからこそ、使徒たちの振れ幅が許容されたのではないかと……あー怒らないでぇ。
34章「ハーフバリ」につづく。
クリント・イーストウッドが30年ぶりに馬に乗る!と評判になった渋い映画。
不仲の父と母の間で傷つき、路上で生きのびている少年を、メキシコからテキサスへ連れ戻す役目を引き受けさせられた老人がイーストウッド。彼は妻子を交通事故で失い、ロデオの栄光もはるか昔のものになっていた。果たして彼は人間としての尊厳を取り戻せるのか……
こう書くと派手なドンパチや愁嘆場が予想されるけれども、思いのほかあっさりと描かれる。ドラマ的にもっとひねりがあってしかるべきではないかと観客は期待するが、イーストウッドはそうしない。むしろ少年との日常を美しい画面に淡彩で描くことのほうが主眼のよう。ラストもあれでいいのか。
彼の映画を観るたびに、これが最後になるのではないかと恐れながら見るわけだが、映画作りの達人である彼の作品を味わうことができる幸運を喜ぶほうが正解なんだろうか。沁みる映画でした。
ちなみに、マッチョというのはわたしの苦手なニワトリの名前です。
「とみ将でラーメンを食べ、お寺さんの門松をつくり、お餅を四升五合も搗く。ああ伍長の年末ってルーティンですねえ」
「なんとか男結びはできるようになりました」
でも年始めから地面は揺れるし飛行機は燃え上がる。裏の畑では桜の木が倒れてました。いったいどんな一年になるんだろう。とりあえず今年もよろしく。