冬は、つとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。
平安時代中期に執筆されたと考えられる清少納言の随筆『枕草子』の一節である。冬は朝の趣を詠ったものだ。
春のあけぼの(日の出前)に対して「つとめて」は7時過ぎ頃だろう。今日の東京の日の出時刻は6時40分であるから、明るくなって凍った空気の様子もわかり、冬ならではの趣が感じられ、私も好きな時間である。趣味の写真撮影でも遠い現地で朝を迎え、その情景を心で写したいとカメラを向けていることが多い。
同じ朝でも、仕事に向かう朝はちょっと違う。以前、28年間勤めた会社は、毎朝4時37分の始発電車に乗り通勤。帰宅は23時を過ぎることも多かった。自宅に5時間しかいなのだから睡眠時間は4時間を切る。40歳になったころから朝起きるのが辛くなり、会社を休みがちになった。ちょうど厄年の頃とも重なり体調を崩しやすかったのかもしれないが、精神的にも辛くなり、結局「うつ病」と診断され1年ちかく休職。復職してからも生活リズムに変化はなく、定年退職までの10年間は自家用車での通勤。毎朝5時半には羽田空港近くの会社の駐車場で、この時期は夜明けを迎えていた。
定年退職後は、念願であった「目覚まし時計で起きない」生活を半年続け、9月から今の会社に就職。6時に自然を目が覚め起床。8時に自宅を出て電車で出勤。仮眠することなく仕事を続け帰宅は翌朝5時。帰宅時に電車のホームを降りた時、以前は、この時間に会社に向かって頑張っていたなと思い出す。
朝の感じ方は人それぞれだろう。朝から元気なご老人もいれば、昔の私のように朝から疲れ切っているサラリーマンもいる。朝がスタートの人もいれば、一日の終わりの人もいる。私は、5時に帰宅しても寝ないので終わりではなく、新たな1日が再スタートする。と言っても午前中は睡魔との闘いでうたた寝の連続だが・・・
朝のスタートがその日一日を決める。だからプラスのエネルギーに満ち溢れた気持ちで朝を始めることが大切だろう。モチベーションを高めるモーニングルーティーンを毎朝行うのが良いという。私の場合は、これまでは朝起きて15分で家を出ていたが、今は2時間ほどある。朝日を浴びながら外でタバコを吸い、ニュースを見ながらゆっくりとコーヒーを飲む。仕事のことは考えない。モーニングルーティーンとは言えない日常の習慣であるが、朝の清々しい雰囲気を毎日感じている。
暑かった夏も記憶から消え、短い秋が過ぎて本格的な冬が始まった今日この頃。冬は、つとめて。その趣を心と体で感じて、今日も1日を始めよう。
以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.