千葉県のヒメボタルは、かつて県立高校の生物部が部誌に記載していたが、その後半世紀以上もの間、生息が確認されていなかった。しかしながら、2004年6月、偶然に生息が確認され新聞紙上を騒がせたのである。生息地には林道が通っているが、集落から数km離れており街灯はない。ここのヒメボタルは深夜型であるため、再発見が遅くなったのであろう。今の所、千葉県唯一のヒメボタル生息地となっている。
生息地周辺は冬暖かく夏涼しいという海洋性気候の特徴を示し、雨量は年間2,000mmを越す最多雨地域である。周囲は常緑広葉樹を主体とした照葉樹林が広がっており、その林内に生息している。標高150mほどで、2004年当時は、低標高に生息するヒメボタルはたいへん珍しく貴重と言われていたが、今では瀬戸内海の無人島において海岸を飛翔するヒメボタルも発見されている。 千葉県のヒメボタルは、千葉県レッドリスト(2019年改訂版)において A 最重要保護生物(尚且つ特に留意が必要な種)として記載されている。
私がホタルの写真を撮り始めたのは、今から40年以上も前からであるが、ほとんどが成虫等を接写した生態写真であった。勿論フィルムである。飛翔風景はネガでもポジでも難しく、何とか見せられる写真が撮れるようになったのは2000年頃であった。ヒメボタルの写真を撮り始めたのは2004年だったが、ゲンジボタルやヘイケボタルよりも難易度が高く、やっとフィルムで奇麗な写真が撮れたのは2009年で、ISO1600のネガフィルムで1時間近く露光したものである。
フイルムで苦労していたところ、2006年あたりからデジタルカメラが広く普及し始め、私も2009年の秋からデジタル一眼レフ(現在も愛用の Canon EOS 5D Mark Ⅱ)を使い始めたが、デジタルで、フィルムと同じような長時間露光でホタルの飛翔風景を撮ろうとすると、数分が限度で、あまり長い時間露光するとノイズがひどくて良い結果は得られなかった。
ところが、新しい撮影方法により、フィルムに勝るとも劣らない画像を得られるようになった。それが、パソコンソフトによる合成である。今では、デジタルカメラも進化し、撮影時にカメラ内で自動で背景と光を重ね合わせてくれる機種も登場しており、パソコンソフトでの作業とともに、ホタル撮影では一般的な方法となっている。フィルムにおいても、長時間露光ではなく、予め撮影した背景に多重露光によってホタルの光を重ねることもできたが、露出計算が難しく、結果は現像してからでなければ分からなかったが、デジタルは楽である。(参照:ホタル写真の変遷)
誰でも簡単にホタルの飛翔風景が撮れるようになった昨今、インスタ映えするヒメボタルの写真を撮ろうと、生息地にカメラマンが群がっているのである。