ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

翅表が見たいチョウ2種

2016-05-05 19:34:41 | チョウ

 チョウの形態的特徴や美しさは、それぞれ翅の裏側であったり表側だったりする。翅を閉じた姿の撮影は、どこかに止まってくれれば難しくはないが、撮影者としては、翅を開いた表の姿も撮りたいものである。しかしながら翅を開いた表の姿は、なかなか撮らせてくれない種が多い。ミスジチョウの仲間等は、止まれば必ず翅を開くが、ミドリシジミ属(ゼフィルス)の仲間は、朝の活動前や占有行動時でなければ見られない。つまり、それぞれの種の生態や行動を知っていれば可能性は高いのだが、飛ぶ時以外は、 絶対に翅を開かない種もいる。代表的なものは、コツバメアオバセセリである。

 コツバメCallophrys ferrea Butler,1866)は、シジミチョウ科コツバメ属で早春にのみ発生するスプリング・エフェメラルである。ツバメのように敏速に飛んでいてもすぐに草の葉や地面に止まり、春の陽に向けて毛深い体を倒すことが多いので、翅裏の撮影は簡単だが、止まれば頑なに翅を閉じ、翅をすり合わせる行動はしても絶対に開かない。
 アオバセセリ日本本土亜種(Choaspes benjaminii japonica Murray,1875)は、セセリチョウ科アオバセセリ属で、年2回5月と8月頃に見られる。 セセリチョウ科では、日本国内で唯一青色の翅を持つ種で翅裏も美しい。飛翔力が強く、目にもとまらぬ高速で飛翔し、花から花へと移動する。他のセセリチョウ科では、ミヤマセセリのように止まれば開く種や、チャバネセセリのように半分くらい開く種が多いが、アオバセセリは絶対に翅を開かない。
 両種ともに超ハイスピードで飛ぶため、肉眼で見ても翅表の色はかすかに確認できる程度。一瞬を止めることができる写真に賭けるしかないが、どちらも手強い。翅表を写すどころか、飛翔写真そのものが難しすぎる。いつも証拠程度の画像しか撮れない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.4.8)

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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トラフトンボ

2016-05-04 13:34:57 | トンボ/エゾトンボ科

 トラフトンボEpitheca marginata Selys, 1883)は、エゾトンボ科(Corduliidae)トラフトンボ属(Epitheca)で、5月上旬に繁殖を迎えるエゾトンボの仲間である。エゾトンボの仲間は、全身が光沢を帯びているが、トラフトンボは、名前にあるように黄色と黒の虎斑模様が特徴である。ただし、複眼は成熟すると 金属光沢のあるグリーンになり、エゾトンボの仲間らしい。
 4月中旬頃に羽化した未熟個体は水域を離れ、林などで生活をする。成熟した成虫は羽化水域に戻り繁殖行動を行うが、トラフトンボの大きな特徴として、メスの産卵行動を挙げることができる。
 産卵は、午後に行われる。オスは、数秒というホバリングをあちこちで行ってはメスを探す。メスを見つけると、雌雄がつながりながらのタンデム飛翔が始まる。産卵場所を求め広範囲を飛び回る交尾態のカップルは、しばらくすると雌雄が離れ、メスは水面近くの植物などに静止し、産卵弁の間に卵を600~800個ぐらい放出して卵塊を作り始める。その後、1回だけ打水してその卵塊を沈水植物に絡ませるのである。卵塊はすぐに数cmから10cmぐらいの乳白色をした細長い紐になってゆっくりと沈み、抽水植物が枯れて倒れた茎などに絡みつくのである。
 トラフトンボは、本州、四国、九州に分布し、挺水植物や浮葉植物が繁茂する比較敵深くて大きい池沼に限って生息している。環境省RDBに記載はないが、生息環境の消失や悪化により、都道府県のRDBでは、東京都、神奈川県、青森県で絶滅、多くの県で絶滅危惧Ⅰ類やⅡ類に選定されるほど数が減ってきている。

 トラフトンボ属は、国内にもう一種、オオトラフトンボ(Epitheca bimaculata sibirica Selys, 1887)が生息しており、2014年7月に未成熟のメスを撮影しているが、 今年は、オオトラフトンボの成熟した個体と産卵の様子を撮影することが目標である。

参照:オオトラフトンボ(飛翔と産卵)

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

トラフトンボ

トラフトンボ(未成熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(2012.4.29)

トラフトンボ

トラフトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(2012.5.5)

トラフトンボ

トラフトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400(2012.5.5)

トラフトンボ

トラフトンボ(ホバリング)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(2013.05.05)

トラフトンボ

トラフトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(2012.06.30)

トラフトンボの産卵

トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)

トラフトンボの産卵

トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)

トラフトンボの卵塊

トラフトンボ(卵塊)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800(2012.06.30)

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ヒメシロチョウ

2016-05-01 21:40:06 | チョウ/シロチョウ科

 ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis vibilia Janson, 1878)は、シロチョウ科(Family Pieridae)コバネシロチョウ亜科(Subfamily Dismorphiinae)ヒメシロチョウ属(Genus Leptidea)に属する白色のチョウで、モンシロチョウよりひと周り小さい。白い色素はフラボン系で,モンシロチョウなどのプテリン系とは異なる。 主として河川堤防や火山灰土質の草原などに局地的に生息し、草原上を低く弱々しく飛び、いろいろな花で吸蜜する。地表で吸水することも多い。幼虫は、マメ科のツルフジバカマ、カラスノエンドウなどを食草としている。
 ヒメシロチョウは、年2~3化で、発生時期によって色彩や形状に変化が生じる「チョウの季節型」があり、4月~5月には春型、7月~9月には夏型が発生する。 春型は夏型より小型で灰白色で、前翅端の黒色部は薄く、後翅裏面に暗色部がある。
 北海道、本州、九州に分布しているが、近畿地方及び四国には見られず、九州では阿蘇・九重の火山性山地草原にのみ生息し、北海道の一部ではエゾヒメシロチョウと混生しているところもある。尚、中国地方では広島県の一部に生息していたが、1994年以降は確認記録がなく絶滅したと考えられる。
 多くの生息地において生息条件の悪化が著しく、個体数が危機的水準にまで減少しており、環境省RDBでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定されている。東京都、栃木県、広島県では絶滅、 その他の多くの自治体においても絶滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類、準絶滅危惧種に選定している。

 2016年のゴールデンウイーク。2日の休暇をとれば10連休になるが、私は暦通り。まずは前半の三日間。初日は自宅で仕事、2日目は小学校からの親友とあきる野の山間部へ散策。ムカシトンボを数頭見かけたが、1枚もシャッターを切ることなく、バーベキューに舌鼓を打ちながらのんびりと森林浴を楽しんだ。
 さて3日目の5月1日。計画通りにヒメシロチョウの春型を撮りに行った。夏型は、2013年8月に撮影済だが、春型は未撮影であったため、是が非でも収めなければならない。 午前6時に自宅を出発し、現地に7時半着。気温12℃。薄着で行ったため寒い。林道を歩き始めるが、お目当てのヒメシロチョウどころか、昆虫はまったくいない。20分くらい歩くと体も温まり、また太陽の光も心地よくなってきた。すると、1頭のヒメシロチョウが舞始め、次第に数も増えて10数頭があちこちでヒラヒラと舞うようになった。
 花言葉ならぬ蝶言葉があるならば、ヒメシロチョウは「か弱い、せわしない。」だろう。地上から30~40cmくらいの高さを弱々しくチラチラと飛び回り、一向に止まらない。止まったかと思うと、すぐに飛び立つので、写真に撮るのが大変で、ずっと付き添いながら止まるのを待って急いでシャッターを切った。以下に、今回撮影した春型のヒメシロチョウと過去に撮影した夏型を掲載する。季節型による色彩の変化が良く分かる。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメシロチョウ

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 250 +1EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500 +1 1/3EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 200 +1EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320(2013.08.11)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(2013.08.11)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 1600(2013.08.11)

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