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今回のフィリピン魚は、ブラバン。
といっても、盗賊奴ではなくブラックバンデッドデムワーゼルAmblypomacentrus breviceps (Schlegel and Müller)です。ブラックバンデッドデムワーゼルは、スズメダイ科の魚です。
体色はルリスズメダイの仲間のミスジスズメダイや、ミスジリュウキュウスズメダイによく似ていますが、体は細く、大き目の個体は鰭がやや伸びています。スズメダイの仲間は成魚と幼魚で異なっているのが多いのですが、本種ではあまり大きな差があるようには見えません・・・。最近でたスズメダイ図鑑では、体側の2本の黒色帯が背鰭でつながるのが本種で、つながっていないのは別種であるとされているのです。この別種はインドネシア周辺海域にのみ分布するという種類だそうですが、この個体はさらに尾の基部の黒色斑も目立ちます。この特徴はFishbaseにもアップされている、フィリピン・セブ島産の個体にも見られます。ちなみに今回の個体は標準体長(SL)で、約4cmでした。この属のものはこの2種類のみが知られていまして、日本には分布しません。
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サンゴ礁域よりも、砂地などに多く見られる種類です。実際に、フィリピンの砂地で引く地曳網のような漁業が行われる場所では本種も採集されます。ただあまり食用価値がないのか、オオヒレテンスモドキや、オニベラ、キスジキュウセンの幼魚などとともに山になってつまれていました。礫や岩、あるいはヤシの実の片などの周りに見られるそうです。
英語名のうちDemoiselleは、「デムワーゼル」とされたり、あるいは「デモイゼル」とされたり、「ドゥモワゼル」という表記がされたりします。これはフランス語のmademoiselleからきているようで、お嬢さん、あるいは、貴婦人、そんな感じだそう。たしかにこの美しい小魚にはふさわしい名前でしょうか。
ただし、スズメダイの仲間には成魚になると気が強くなる、というものも多く、ある種の英名に「デビル」なんていうのもあったりします。お嬢さんも、大きくなれば気が強く、デビルになる。魔女、ということでしょうかねぇ。