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魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

標準和名の持つ意味とは

2022年09月28日 00時14分29秒 | 魚類とインターネット
(このコラムは、もともとFacebookで書いたものであり、それをもとに、公開日付の変更や、追記などを行ったものです。なお2022年10月3日にNHKBSプレミアムにて、同番組の再放送が行われる予定です)
 
ホウライヒメジ
 
昨日9月27日、昨日NHK BSプレミアムで放送されていた「ワイルドライフ」の録画を見た。タイトルは「紀伊半島潮岬 オジサン大集結!命わきあがる海」というもの。しかし、1時間の番組の中で「オジサン」は1匹も出てこず、出てきたのは「ホウライヒメジ」の群れであった。
 
番組の中では「オジサンとは、ヒメジ科ウミヒゴイ属の魚の総称」とされていたが、これは種標準和名のオジサンがいる以上は望ましくない。魚類の標準和名の定義などについては日本魚類学会の標準和名検討委員会が定義しているので目を通していただきたいが、「標準和名は自然科学、教育、法律、行政等、分類学的単位を特定し、共通の理解を得ることが必要な分野での使用が推奨される」(上記標準和名の定義より)ものとなっていて、魚を語るときは「標準和名を使用すること」が重要である。その一方、「魚類学会標準和名の定義等について」においては「ただし、それは通俗名(方言や商品名等)の使用を制限するものではない」という一文がついている。したがって、今回のテレビ番組のように、ホウライヒメジをオジサンと紹介しても何ら問題ないということになる。
 
ただし、これについては問題がある。「標準和名以外の魚名は優しくない」のだ。ぶっちゃけて言うと、標準和名以外の言葉で会話した場合、魚の名前が伝わらず、混乱を招いてしまうこともあるからだ。もし標準和名以外の魚の名前も知りたい、使いたいというのであれば、必ず標準和名を覚えておかないと、混乱を招く。少なくともテレビで魚種を紹介するときは種標準和名をしっかり使うべきであろう。
 
もうすでに混乱が始まっている。鮮魚店などで「オジサン」という名前で販売されているのはほぼホウライヒメジか、オキナヒメジであるし、釣果サイトでもホウライヒメジやオキナヒメジなんていう種標準和名には全くお目にかかれず、ほぼすべて「オジサン」となっている。そして何が問題なのかというと、例えば「オジサンの標本が欲しい」と思ったときに募集をかけると、ホウライヒメジやオキナヒメジなどが集まってしまうおそれがあるし、オジサンを飼育したくて通販で購入したらより大型に育つホウライヒメジなどが来てしまう危険性がある。なお、同様に混乱を招きやすい標準和名をもつ種は、ほかにクロムツやアカメフグ、オニカサゴなどがいる。これらは釣り人がムツやヒガンフグ、イズカサゴなどを指すときに使うことが多い。魚を語るときは標準和名で語ることが重要である。とくに、インターネットなど、様々な地域の人が集まるコミュニティではその重要性が高まる。
 
NHKは普通のテレビ放送局ではなく、一般市民からの受信料で成り立っているのである。だからこそ、NHKにはしっかりとした放送をしてほしかった。特にタカアシガニとミノカサゴの関係、死んだシコロサンゴに生える海藻、アザハタとキンメモドキの関係など、いいポイントもあったのだから、とてももったいない気がする。しかし細かい欠点は、よいところを台無しにしてしまう。それでは受信料を払った視聴者に申し訳ないだろう。立花孝志氏や、ガーシー氏らがあれほど世間を騒がしてもNHK党がいまだに人気があるというのは、こういうところなのかもしれない。
コメント
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