平野部にすむ日本人にとって、メダカOryzias latipes (Temminck and Schlegel)は最も身近な淡水魚の一つといえます。メダカは平野部の用水路・ため池・水田にくらし、たくさんの「がき」を育ててきました。私自身も、この魚に育てられた「がき」の一人でした。
この魚はまた、地方名が非常に多く、そのことからも古来人間にとって身近な存在であったことがうかがえます。
そのメダカたちは近年、どうなったでしょうか。
最近メダカは宅地造成などで水田が減っていき、なかなか見ることができなくなりました・・・という向きがありますが、そういうことを伝えますと、すぐ「何かしないと」と今の人間はすぐ手をうちます。そして今の小学生によりメダカを手取り早く増やすために「飼って、放流」ということが行われているケースがあります。
しかし、この放流が逆に悪影響を与えるケースも多いのです(遺伝的多様性を損なう、劣勢遺伝子の勢力拡大、ほか)、
一概には言えませんが「善意の放流」が必ずしも「善」であるとは限らない、ということです。
メダカを脅かす原因はこの「善意の放流」だけでなく、外来種の問題もあります。
この魚はメダカ・・・ではありません。
外来種のカダヤシ(タップミノー)Gambusia affinis (Baird and Girard)です。
この魚は和名の通り、「蚊絶やし」のために移入された外来種です。この魚は繁殖力が強く(仔魚を産む)、攻撃性が強いなど、在来のメダカを駆逐する要素を多数持っています。都市近郊の小規模な用水路では、完全にメダカとカダヤシが入れ替わった場所もあります。現在では「特定外来生物」に指定され、生きたまま無断で飼育・運搬などができなくなりました。
今回採集した場所ではメダカばかりで、カダヤシは見ていません。しかし生物多様性という面では、それを脅かす外来種のウシガエル、アメリカザリガニ、オオフサモなども見られ、安泰とは言えません。さらにいえばこのメダカももしかしたら「善意の放流」による個体かもしれません。この個体が在来であること、そしてカダヤシなどの外来種がこれ以上持ち込まれて放されないことを祈りたいとおもいます。
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