このコーナーも記念すべき30回目です。
オオスジイシモチ Apogon doederleini Jordan and Snyder
今回は「久しぶりに」「普通の」魚を取り扱いたいな、と思います。テンジクダイ科のオオスジイシモチです。西日本の釣り人ならわかりますね。あの縞々模様の魚です。
●名前
標準和名は「オオスジイシモチ」ですが、関西では「じゃこ」とか呼ばれており、余り人気はありません。
キンセンイシモチの項でも紹介しましたが、属名のApogon(アポゴン)というのは、テンジクダイ属の属名です。ギリシャ語でa~というのは、「~ない」、pogonというのは「ヒゲ」という意味です。日本語訳すれば「ひげがない」という意味です。
欧州の人々は、この仲間をヒメジの類に近縁だと考え、下あごにひげを持たない本属魚種に「ひげがない」という意味の学名をつけたようです。確かに、背鰭が二基であることなど、ヒメジに一見してよく似ています。
英名の Doederlein's cardinalfish や、種小名のdoederleiniというのは、どちらもL.デーデルラインというドイツ人の学者にちなんでいます。彼は来日し、様々な生物を収集しました。本種と同属のテンジクダイ類「クロイシモチ」に学名をつけたのも彼です。
●近縁種
「今日の魚」の記念すべき第1回で紹介したコスジイシモチにそっくりですが、本種では体の縦縞の数が4本で、これが7本あるコスジイシモチと区別可能です。
黒潮洗う海にはタスジイシモチやミナミフトスジイシモチという本種にそっくりなテンジクダイ科魚類がいますが、この2種の縦縞は太いので縞模様が細い本種と区別できます。
コスジイシモチ
生態
肉食の魚で甲殻類や小魚などを捕食します。魚は昼行性と夜行性のものに分けられますが本種は昼・夜どちらでも餌を食ってきます。そして簡単につれます。本種の好む餌は甲殻類(エビ等)、小魚、動物プランクトンなどで、夜間は小魚の多い場所では良くつれます。本種はマウスブリーディング(口内保育)を行います。雄が口の中で卵が孵化するまで見守るのですが、孵化したら周りの子供たちは餌、親に食べられてしまうこともあります。
利用
あまり食用にはしないのですが、鱗をとって塩焼きにする、あるいはから揚げにすると美味しく食べられます。この魚は市場に出ることがないので、この魚を食べられるのは釣り人だけですよ!!
オオスジイシモチ 2007年10月に採集。
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