久しぶりのぶろぐ更新です。ベラ科・テンス属のクロブチテンス。
テンスの仲間も種類は多いが、多くは30cmくらいまで。しかしこのクロブチテンスは全長40cmを超える大型種である。インドー太平洋産のテンスの仲間ではおそらく最大級ではなかろうか。
学名はIniistius geisha、つまり「芸者」である。FishbaseでのKuiterのベラ図鑑「Labridae Fishes:WRASSES」ではGeisha razorfishとされている。タイプ標本は沖縄近海である。海外では台湾にも分布していることがしられているが、グアムなどからの記録もある。一方属学名については意見が分かれており、「日本産魚類検索」ではIniistiusとされているが、先述のKuiterのベラ図鑑ではXyrichtysとなっている。太平洋や大西洋に生息するテンスモドキ属もこの中に含めている感じだ。たしかにIniistiusとされても見た目がXyrichtysのように見えるものもいるので、おそらく分けられないのかもしれない。なおオビテンスモドキおよびオオヒレテンスモドキについてはそれぞれ別属である。
テンスの仲間も歯が鋭い。イラ類などほかのベラ科魚類もそうであるが、サンゴ岩などをどかしてその下に生息する甲殻類などを捕食するためにそのような歯になっているものと思われる。吻はほかのテンス属の魚と同様に直線的である。頬の部分にはオレンジ色の斑点がある。
クロブチテンスは水深100mくらいの場所に多く、一般のダイバーが出会うことができないベラの仲間である。確実に本種と同定できる水中写真もない。亜熱帯の深場の魚の生物を展示することに定評がある沖縄美ら海水族館でも展示されたことはないらしい。数も少なく珍しい魚といえるだろう。
そんなクロブチテンスが3匹も我が家にやってきたのだ。私的には大興奮である。
テンスの仲間はかつてテンスとヒノマルテンスの煮つけを食した。テンスの仲間はあまり大きくならないので煮つけなどになる。しかしこれほどの大きさのものは煮つけにするだけではもったいない。ということで鍋にいれたり刺身にしたりして色々食してみた。
クロブチテンスのお刺身。ほんのり赤い白い身が美しい。悪くはないのだがちょっと厚く切りすぎた。そのため先ほど薄く切って食したがこれはとても美味であった。暑かったのに鍋にしても食べたがこれも美味しかった。いずれにせよテンス属である本種をイラ属のように食することができるのは貴重な体験であった。
今回のクロブチテンスはTwitterでのお友達「ホンマさん@魚捌いてる人」さんより、初めて購入させていただいた魚。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
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