標準和名に「サケ」「イワシ」とついていても、サケでもイワシの仲間ではない魚。ニギス目・ソコイワシ科・ギンザケイワシ属のギンザケイワシ。どうやらソコイワシ科はこのぶろぐ初登場のようだ。この科の魚は日本では8種ほどが知られているが、食用にされることはほとんどないのでほとんどなじみがないだろう。そもそもニギス目の魚自体、ニギス科くらいしか食用にされておらず縁遠い魚といえる。
この仲間は2つの亜科に分けられている。それぞれBathylaginaeとMicrostomatinaeであるが、ギンザケイワシ属は後者に含まれる。そのほかのソコイワシ科魚類は前者に含まれる。またギンザケイワシ属は従来はニギス科に含まれていたことがある。MicrostomatinaeはほかにMicrostoma属と特殊な眼を有するXenophthalmichthys属も含まれているのだが、日本に生息するのはギンザケイワシ属のみである。ソコイワシ科にはよく似た名前のギンソコイワシというのがいるが、こちらは幾分口が大きい。また亜科もBathylaginaeのほうになっている。ちなみにこれらの亜科の標準和名はあるか不明である。
ギンザケイワシの特徴は眼が非常に大きく、口がとても小さいことである。ただしそれでも口の後縁が眼の前縁を超えないソトイワシよりは大きい。日本産ギンザケイワシ属のもう一種であるクロサケイワシはギンザケイワシよりも吻がやや長いことや、鰓耙の数で見分けることができる。第1鰓弓下枝の鰓耙数はギンザケイワシで18~23、クロサケイワシでは15~17とされており、ギンザケイワシのほうが多いようだ。分布域はギンザケイワシのほうが広く、東北地方太平洋沖、相模湾、熊野灘、土佐湾、沖縄舟状海盆。海外ではインド—西太平洋に生息する。クロサケイワシは東北地方太平洋岸、海外ではアラスカ~カリフォルニア沖にまで生息する。なおクロサケイワシの学名はNansenia sanrikuensisとされたが、これはNansenia candidaのシノニムとされる。北太平洋の亜寒帯の深海魚は太平洋の東西にわたる分布域をもつような種が多いような気もする。
なお、このギンザケイワシは私が初めて見たソコイワシ科魚類ではない。このほかにトガリイチモンジイワシも見ているし、クロソコイワシも見ている。ギンザケイワシも以前いただいたもの(東北地方太平洋岸産)を見ていた。なお、今回のギンザケイワシは静岡県戸田の「ヘンテコ深海魚便」青山沙織さんより。いつもありがとうございます。
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