今回も、以前入手した魚のご紹介。ニシン目・ヒラ科のヒラ。
ヒラは従来はニシン科に入れられていたが、現在は別科とされている。科の英名は「Longin herrings」、つまり「長い鰭のニシン」という意味であるが、どうやら長い臀鰭にちなむようだ。臀鰭軟条30~92本ということで、ふつう12~29軟条のニシン科と異なる。また腹部の稜鱗も特徴的である。この科のものは大きくPelloninaeと、Pristigasterinaeという二つの亜科に分けられる。前者にはイヌバニシン属Chirocentrodon、ヒラ属Ilisha、Neoopisthopterus属、Pellona属、Pliosteostoma属が含まれ、後者にはギアナニシン属Odontognathus、Opisthopterus属、Pristigaster属、Raconda属が含まれ、世界で38種ほどが知られている。世界の暖かい海~淡水域に生息し、アマゾンの流域などではハチェットへリングという、カラシン目のハチェットフィッシュに似た形の種類も知られている。収斂のひとつなのだろうか。逆に細長いものではギアナニシンなどの種類も知られていて、このような種類の中には臀鰭軟条数が90を超える種もいる。
面白いグループの魚ではあるのだが、日本に生息するヒラ科の魚はヒラ1属1種のみ。このヒラは関東ではなじみが薄いかもしれないが、瀬戸内海や有明海などの九州沿岸ではそこそこよく見られる魚である。分布域は比較的広く、北海道太平洋岸、三浦半島、紀伊水道、日本海、瀬戸内海、九州沿岸。海外ではピーター大帝湾からインドまでの沿岸に生息する。関東沿岸でも数は多くないが全く出現しないというわけではないようだ。
このヒラは九州沿岸では食用魚として重要であるが、釣りの対象としてもよく知られている。「有明ターポン」というニックネームがついており、ルアー釣りで狙うのだとか。しかし「ターポン」というのはカライワシ目イセゴイ科の魚で、全く違う魚なので混同しないように注意。有明海でもイセゴイやカライワシなどは漁獲されているようであるが、それらはレプトセファルスという葉形仔魚であることが多い。カライワシ目の魚はウナギ目などと同じ「カライワシ上目」とされており、幼魚はレプトセファルス期を経るのだという。ヒラはこの期を経ることなく成長する。動物食性が強く甲殻類のほか小魚も食するようだ。成魚は全長50cmにもなる大型種。小骨は多く、切り方に工夫が必要なものの、刺身にして美味であった。ほか煮つけなどにしてもよいようだが、いずれにせよ骨切りが必要である。
今回のヒラは長崎県産。長崎 印束商店の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。
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