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3月に入りました。
相変わらず仕事が忙しく、どうしようもない。さて、今回の魚はタラ目・チゴダラ科・チゴダラ属のバラチゴダラ。確実に同定できるものとしては、私が触った2種目のチゴダラ属の魚である(エゾイソアイナメはチゴダラのシノニムとして消えてしまった)。チゴダラ属の中でも比較的新しく1989年に新種記載されたもので、学名をPhysiculus chigodaranusというが、種小名はチゴダラにちなむものなのだろう。この種は1989年にチゴダラ属や、ナガチゴダラ属の分類学的再検討の中で新種として記載されたものの1種だというが、その文献を見ることは叶っていない。この属は40種ほどが知られチゴダラ属の中で最も多くの種をふくむ属といえるだろう。
第2背鰭と臀鰭、胸鰭、尾鰭が赤みを帯びている。このことから「バラチゴダラ」という標準和名になるのであろうか。底曳網で漁獲されたものであるため、残念ながら鱗はほとんど脱落してしまっていた。なお比Fishbaseにおけるコモンネームで「Rosy cod」なる名前のチゴダラ属魚類は、学名でPhysiculus roseus Alcock, 1891と呼ばれるもので、ベンガル湾からオーストラリア、インドネシア、ニューカレドニア、台湾などに分布する。本種は鹿児島県のものをタイプ標本とし、ほか土佐湾や三重県尾鷲でも記録されている。またFishbaseによれば台湾からの記録もあるという。「日本産魚類検索」によれば生息水深は不明ではあるが、ヨロイイタチウオやキュウシュウヒゲ、オオメハタ属が混獲されていたことから、200~250mくらいではないかと思われる。おそらく鹿児島県内で盛んにおこなわれている、タカエビ漁の副産物であろう。
第1背鰭の形状は日本産チゴダラ属と違って、糸状に伸びている。以前このぶろぐでも紹介したソコクロダラなども背鰭が糸状に伸長しているが、ソコクロダラは臀鰭起部が背鰭起部の直下よりもだいぶ後方にあるため見分けられるようである。本種などチゴダラ属は原則、臀鰭起部は背鰭起部の直下にある。
腹面発光器は三角形で、左右の腹鰭基部を結ぶ線に達するとされるが、この個体は微妙なところである(写真も暗くなってしまった)。ただし、チゴダラのものとは違う独特な形状のものであることから、バラチゴダラと同定してもよいのだろう。今回バラチゴダラは2匹入手。鹿児島魚市 丸万 田中水産の田中 積さんに送っていただいた。いつもありがとうございます。なおバラチゴダラの食レポについては、また今度。
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