「アジ」といえば基本的に細い体つきで稜鱗をもつもの、と思っておられる方も多いでしょう。しかし世の中、そうでないアジの仲間もいるものです。このクロアジモドキは、アジ科の魚なのですが、体高が高く(もっとも、一般的なアジの仲間にも体高がたかいものもいますが)、稜鱗もないという魚です。この魚をおくっていただいたのは以前キタノホッケをおくっていただいた「丸集」出川公平さん。ありがとうございました!
クロアジモドキは南方系の味の仲間です。これまでに1回出会っているのですが、この個体を含め2回とも鹿児島県産。比Fishbaseによると南アフリカ~オーストラリアにまで分布しているようです。
幼魚には腹鰭もあるようなのですが、成魚では消失してしまっています。それだけでなく、アジ科の特徴の一つでもある臀鰭棘も皮下に埋没してしまっています。大きな背鰭と臀鰭が特徴で、まるでマナガツオの仲間のようです。実際クロアジモドキ属の学名Parastromateusというのは「側」という意味のParaと、マナガツオ科の一属の学名Stromateusを合わせた意味になるようです。そしてマナガツオの仲間のStromateusは幼魚はクラゲにつくのですが、このクロアジモドキも幼魚のうちはクラゲにつくのだそうです。Stromateus属は「ゴマシズ」と呼ばれる魚の仲間で、脂がよくのっており美味しいようですが、食べると下痢をするおそれがあるとのこと、当面販売自粛とされてしまっていたりします。マナガツオの仲間はサバ科やクロタチカマス科、シマガツオ科などと近縁という意見もありますが、アジ科との共通点もありそうです。
尾柄を背面から見たところです。尾柄の部分には稜鱗(ぜんご)らしいものはなく、尾柄が少し膨らんでいるくらいです。もっとも日本人がよく食するアジの中にも稜鱗がない種もいます。ブリやカンパチ、ヒラマサといったブリの仲間やコバンアジ、イケカツオなどがそれです。そういえば昨日、Facebookのお友達にすごいアジの仲間を見せて頂きましたが、まさに衝撃的でした。まさか、あの魚が九州の北部にいるとは。
今回のクロアジモドキはお刺身で食べました。身には臭みなどはなく、よく脂がのっておりそのままでも美味しくいただけました。半分はこのまま食べましたが、寒くなったので他一部はしゃぶしゃぶにしましたが、これもまた美味しいものでした。
出川公平さん、今回もありがとうございました!
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