魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

シチセンスズメダイ

2017年01月20日 19時18分06秒 | 魚紹介

だいぶまえにいただいた魚のご紹介。スズメダイ科・オヤビッチャ属のシチセンスズメダイ。

オヤビッチャ属の魚は日本に8種類が知られている。喜界島には6種がいるのを確認しているが、すべての種が浅いサンゴ礁に生息していて、イノーでのウキ釣り、脈釣りで多数釣れる。多くはシマスズメダイ、オヤビッチャで、イソスズメダイやシリテンスズメダイも釣れるのをみている。ロクセンスズメダイは防波堤に多い。

シチセンスズメダイはロクセンスズメダイに名前がにているものの、実際にはロクセンスズメダイよりもシマスズメダイに似ていて、地味な灰色の縞模様が特徴。シマスズメダイよりも顔つきが丸く、頭部には黒い斑紋がない。シチセンスズメダイの分布は国内では千葉県以南の太平洋岸、琉球列島、尖閣諸島だが、関東ではあまり見ない。海外では東アフリカからトゥアモトゥ諸島に至るインド-中央太平洋域に見られるが、ハワイ諸島にはいないようである。


シチセンスズメダイ

シチセンスズメダイ頭部


シマスズメダイ

シマスズメダイ頭部

シチセンスズメダイとシマスズメダイの見分け方は頭部を見るとよい。シマスズメダイは頭部に黒い斑点があるあるが、シチセンスズメダイのそれは明瞭ではなく、後頭部に斜めの線が入る。シマスズメダイは眼下骨上に鱗があまりないが、シチセンスズメダイにはびっしりと鱗がある。


シチセンスズメダイ尾部


シマスズメダイ尾部

日本産魚類検索ではシチセンスズメダイの尾柄部には黒色斑がないことになっているが、実際には成魚には薄いけど黒色斑のある個体もいるし、幼魚には明瞭な黒色斑があったりする。

シマスズメダイは千葉県以南太平洋岸、九州北西岸からインド-太平洋域に広く分布しているが、ハワイ諸島に分布するところはシチセンスズメダイとことなる。生息環境自体は2種ともあまり違いはなく、サンゴ礁域のごく浅い場所に見られる。幼魚の写真だけでは同定が難しい場合もあり、成魚まで育ててみたいところだが、性格は荒くほかの魚との飼育はむずかしい。もっともこれはほかのスズメダイにもいえることだが。

今回の個体はHN「がほー部長」さんより頂いたもの。ありがとうございました。

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クロガジ

2017年01月18日 14時32分16秒 | 魚紹介

ここ数日忙しかったのですが、久しぶりにぶろぐを更新。スズキ目・ゲンゲ科・マユガジ属のクロガジ。

クロガジが含まれるマユガジの仲間は日本に24種いるが、本種は大きめのもので全長60cmを超える。クロガジの特徴は体が一様に黒っぽく、体側に目立つ横帯などはない。

ゲンゲの仲間の側線は小さな孔器列で、側線がどこを走るか、は種の同定に欠かせない。クロガジの側線は頭部から後方へいったん下がったあと、体の中央付近を走るというもので、その点では腹方を走る側線があるフタスジクロガジや、側線が胸鰭付近までしかないヒナゲンゲと区別することができる。

頭部の感覚孔は管状ではなく、単なる小孔。この特徴でヤセマユガジと区別することができる。ヤセマユガジに似たものにスミイロマユガジというものがいたのだが、このスミイロマユガジは現在はヤセマユガジと同種だという。検索図鑑を見る限り、ヤセマユガジは側線の位置もクロガジとは違っている。

クロガジは水深1000m以浅の深海に生息する種類で、刺網や底曳網などで漁獲されるものであると思われる。日本における分布域は北海道のオホーツク海近辺に限られ、新潟県佐渡からの記録は誤りかもしれない。海外ではオホーツク海からベーリング海にまで分布している。日本語で検索してもあまり出てこないが、比Fishbaseではロシア産のものが掲載されており、本種であるとわかった。今回の個体も北海道オホーツク海で採集されたもの。坂口太一さん、ありがとうございました。ゲンゲの仲間は鍋物・煮つけなどにするとかなり美味しい。本種も鍋ものは非常に美味であった。

名前がよくにたゲンゲ科の魚にクロゲンゲというものがいる。クロゲンゲもクロガジ同様にマユガジ属の魚であるが、全長30cmほどの小型種である。胸鰭の後縁輪郭に凹みがあることで、それがないクロガジと区別することができる。日本においては北海道オホーツク海沿岸から山口県までの日本海岸にまで生息する種で、クロガジよりも南方系。なおFishbaseには掲載されているが、残念ながらクロゲンゲには出会ったことはない。

オロチゲンゲ

写真の個体はクロゲンゲによく似たオロチゲンゲという種。クロゲンゲは背鰭の前のほうに黒色模様があるのに対し、オロチゲンゲにはそれがないのが特徴。胸鰭の特徴がクロゲンゲに似るゲンゲは日本近海に4種が知られ、日本海にはそのうち3種が知られている。ヨコスジクロゲンゲは北海道から千葉県銚子までの太平洋岸に生息し、日本海では見られない。

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ヤギシリカジカ

2017年01月12日 21時48分06秒 | 魚紹介

二日連続カジカの仲間でごめんなさい。北海道シリーズの続き。

スズキ目・ウラナイカジカ科・ヤギシリカジカ属のヤギシリカジカ。

ヤギシリカジカはやや細長い体でガンコによく似ているが、後頭部に棘がないことでガンコと区別できる。また背鰭は1基であることで、この特徴でもガンコと区別することができる、ガンコは背鰭が2基に分かれているのだ。

ガンコ

体は同じウラナイカジカ科のボウズカジカやニュウドウカジカなどと比べると細長い。ガンコよりも頭が小さくスリムな印象。

ウラナイカジカ科魚類のお約束、頭部正面の写真。ニュウドウカジカのようなぶさかわ系ではないし、鼻のように肉が垂れているようなこともないものの、キャラクター化したらかわいいだろう。

ヤギシリカジカは日本では北海道の周辺海域にのみ分布し、海外では朝鮮半島から間宮海峡、ベーリング海を経てアラスカ湾までの北太平洋とチュクチ海に分布する。ヤギシリカジカ属には2種がいるとされ、もう一種Eurymen bassarginiはピーター大帝湾に生息しているようだ。日本産のヤギシリカジカ属魚類は1属1種である。浅場から水深400mほどの海底に生息し、刺網や底曳網などの漁法で漁獲される。

ウラナイカジカの仲間もカジカ同様鍋物が美味しい。今回は鍋で食した。鍋のほかには唐揚げなども美味しいので次回この魚がもし来ることがあったら、唐揚げで食べてみたいものである。以前私がかかわっていた某図鑑サイトにもこのヤギシリカジカが登録・掲載されているがその個体をアップされていたのはプロの魚屋さんであった。それでも流通していないというが、実際に食べて美味であたのでほかの多くの方にも味わってもらえるよう流通してほしい、というのが正直なところ。そうなればこの仲間ももっと市場に出て食べる機会が増えるに違いない。このヤギシリカジカの出会いで、日本に分布するウラナイカジカ科11種のうち7種と出会ったことになる。後コンニャクカジカ、ウラナイカジカ、トサカジカ、そしてクマノカジカ。いつかこれらと出会うことが楽しみなのである。

今回のウラナイカジカも坂口太一さんに送っていただきました。ありがとうございました。

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トゲカジカ

2017年01月11日 22時36分40秒 | 魚紹介

久しぶりの感がある北海道シリーズ。

スズキ目・カジカ科・ギスカジカ属のトゲカジカ。

ギスカジカ属は分類学的にいろいろ問題はあるが、日本に4種類が分布している。Fishbaseによれば全世界で16種ほどいる、ということだが、シノニム関係の整理が必要なようだ。トゲカジカは日本に分布するカジカ科魚類では最大級の種類で、大きいものは全長60cmに達する。Fishbaseではなんと最大で全長80cmに達する、とある。

カジカ類は頭が大きいのが多い。トゲカジカもそうである。トゲカジカの場合、後頭部に2対の明瞭な棘がある。頭部背面の画像は撮影をし忘れてしまった。申し訳ない。検索図鑑では北海道オホーツク海産のものでは後頭部の棘は痕跡的としているが、今回北海道オホーツク海産の羅臼で採集された個体には明瞭な棘があった。上の写真の矢印がそれ。

一方尾鰭の縁辺も白いのが特徴。明確に白色であることで、同じく後頭部に明瞭な棘を有するオクカジカと見分けることができる。先ほども述べたように日本産のギスカジカ属は4種からなるが、オクカジカだけはまだ見たことがないのである。オクカジカとの見分け方はこのほかに体側背面に目立つ大きな円形の鱗がオクカジカにはあるのに対し、トゲカジカの鱗は小さな棘のような鱗である。

これまでもトゲカジカは何度か見ているのだが結構変異は大きいようだ。体が細いの、太いの、丸みを帯びているもの、細長いもの。変異も多いから、別種として記載されたことも多かったのだろう。先ほどの棘の有無も含めて本気で調べたら面白い結果がでるかもしれない。しかしトゲカジカは大きいものはそれなりの値段になるので、大量には入手しにくいだろう。分布域は広く、日本では新潟県・岩手県以北。北海道では全沿岸に分布。海外では朝鮮半島、ロシア沿海州、カムチャッカ半島から米国ワシントン州にいたる北太平洋、ベーリング海、チュクチ海。浅い海から水深200mを超える深海にも生息しているようだ。

北海道では「なべこわし」と呼ばれ、汁物や鍋物などで美味しいとされる。肉にはうまみが少ないのだが、肝や卵などを入れて食べるとかなり美味しい。大型のカジカ類は美味なものが多い。

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マダラエソ

2017年01月07日 15時15分34秒 | 魚紹介

今日は北海道シリーズは一休み。ヒメ目・エソ科・マエソ属のマダラエソ。

エソ、といえば砂浜の投げ釣りで釣れてくる、あの鋭い歯をもついかつい顔をした魚。本州から九州の海でシロギスを追いかけていると釣れる魚だ。シロギスの餌のゴカイ類を追いかけるだけでなく鋭い歯でシロギスを加えていたり、などと本当に貪欲な魚である。

本州でエソといえばマエソ、トカゲエソ、ワニエソといったマエソ属の魚が多い。一方沖縄などのサンゴ礁域にはアカエソ属の小型種、たとえばミナミアカエソ、アカエソ、オグロエソ、ヒトスジエソといった種が知られている。

もちろんサンゴ礁域にもマエソ属の魚は分布している。このマダラエソという種類は、マエソ属の魚としては珍しくサンゴ礁の浅い場所に生息している魚だ。マエソ属のうち、本州から九州にかけて生息するものの中にはトカゲエソやワニエソなど大型になる種もいるが、このマダラエソは30cmくらいまでである。

マダラエソとほかの日本産マエソ属とは、体側に明瞭なまだら模様があり、尾鰭にも模様がある点が異なっている。これらの特徴で、マダラエソによく似ているウチウミマダラエソをのぞくすべての種と見分けられるだろう。

マダラエソとウチウミマダラエソの違いはいくつかあるが、まずは体側の斑紋。マダラエソの場合一部が横帯状になるが、ウチウミマダラエソではそのようにはなっていない。

またウチウミマダラエソは胸鰭が腹鰭基底後端を超えないことで、胸鰭が腹鰭基底後端をこえるマダラエソと見分けられる。しかし小型個体の場合は難しい場合も多い。本種に限らずエソの仲間は同定が難しいものが多いのだ。サンゴ礁ではよく見られるアカエソ属はアカエソとミナミアカエソであるが、これらの種の違いも微妙だという。だれか分子分類学的なものを用いてやってくれないかな。

マエソ属の場合は成魚では違いがまだ分かりやすいほうだ。一般に本州から九州の沿岸で釣れるワニエソ、トカゲエソ、マエソ。これらは尾鰭を見たり、胸鰭を見たり、あるいは側線鱗数をみればまだわかる。ただしこれも横から撮影した場合の話。

マエソ属の魚はみなハンター。小魚や甲殻類を捕食する。マダラエソは相模湾以南太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島に分布するが、多くは琉球列島以南に見られる。海外では東アフリカからハワイ諸島。ハワイ諸島には本種によく似た種もいるらしい。今回の個体は喜界島の「がほー部長」さんに送っていただきました。ありがとうございました。

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