昨シーズンのフィギュアスケート・全日本選手権(2014)が終わり、世界選手権代表選手が発表されたとき、見ていたつれあいが言った。「宇野くんは?宇野くんは出ないの?」つれあいは2位になった宇野昌磨が気に入ったらしい
しかし、四大陸選手権にはシニアに上がる予行演習として出すが、あとは世界ジュニアに集中させるという方針だったんだろう。世界ジュニアから世界選手権までは期間が短いので、シニアの30秒長いフリーの練習を積むには時間も足りないし^^;(四大陸から世界ジュニアは、30秒短くするわけだから、負担は大きくない。)
四大陸5位、世界ジュニアは期待どおり優勝して、いよいよシニアに上がった2015/2016シーズン。ジャパンオープンでいきなりフリー185.48を出し、スケートアメリカでGP初出場2位、SPだけとなったエリックボンパール杯1位。フリーで4回転2本トリプルアクセル2本を鮮やかに決めたグランプリファイナルで銅メダルと、一気に駆け上がった。
全日本選手権は2014年と同じ2位だが、もう“予想どおり”の2位。四大陸選手権は4位、SPは自己ベストを更新して2位だったが、フリーで4回転2本ともクリーンに決められなかったのが惜しかった。
そして日本男子3枠獲得の“使命”を帯びてデビューする世界選手権。SPは4回転、トリプルアクセルときれいに決めたが、コンビネーションのセカンドが2回転に。それでも4位と悪くない位置につける。フリーはトリプルアクセル2本を後半にする攻めの構成、しかし4回転の2本目で転倒。1本目が単独だったため、+REPで大きく点を失ってしまった。
264.25で7位は十分健闘なんだけど(3枠獲得も果たしたけど)、涙が止まらなかった宇野くん 同い年の金博洋(Boyang JIN)が、四大陸に続いて世界選手権でもルッツ、サルコウ、トウループ2本計4本の4回転を成功!銅メダルに輝いた。ジュニア時代からのライバルに負け、練習でできていたことができなくて、悔しかっただろう。
しかし、彼にはシーズン最後にもう一度チャンスがあった。チームチャレンジカップのSPで、いきなり4回転フリップ成功 世界初の快挙を成し遂げてしまう。さらにトウ・トウ4-3も、おそらく彼自身初めてだったのでは? イーグルからのトリプルアクセルも余裕で、非公認ながら105.74点 アメリカの実況は「100点クラブに入会!」みたいなことを言っていた。
フリーでもいきなり4回転フリップ成功 世界選手権から帰国3日後に練習を始めたばかりなのに(スポーツ報知)。加えて後半に4回転トウループ2本を着氷、トリプルアクセル+1回転ループ+3回転フリップも 3連続コンビネーションはずっとダブルアクセルからだったので、これも自身初めてなのでは?
フリーのジャンプ要素最後の3つが4回転、4回転のコンビネーション、トリプルアクセルからのコンビネーションというのは、前代未聞かも グランプリファイナル以来の技術点100点越えで、非公認ながら自己ベストを上回る192.92。
元々表現力が高く評価されていたが、ジャンプは苦労していた。ジュニアでも多くの男子がSPにトリプルアクセルを入れてくる中で、なかなか確率が上がらず、ダブルアクセルにせざるを得ない時期が長かった。少しでも高い得点を狙って、SPの最後にダブルアクセルというシーズンもあった。
それがシニアに上がったら、一気に“跳べる”選手に大変身 記事によると、中京大学でトレーナーについて体作りをしているそうな(日刊スポーツ)。たしかに、体幹がしっかりしてきた感じがする。
それは、滑走姿勢の美しさにもつながっていると思う。ただバッククロスをしているだけでも、エッジが深く倒れて、ぐいっぐいっと氷を押していく力強さに惹きつけられるのだ。
今季の演技構成点の変遷を見てみよう。
SP フリー
U.S.インターナショナルクラシック 34.20 75.20
ジャパンオープン 86.00
GPスケートアメリカ 38.50 84.30
GPエリックボンパール 40.85
グランプリファイナル 42.52 89.58
四大陸選手権 42.93 89.22
世界選手権 43.57 86.58
チームチャレンジカップ 44.85 89.50
シーズン序盤は昨季とあまり変わらなかったが、じわじわ上がってもう落ちなくなった。四大陸のフリーではトランジション以外の4項目が9点台に乗ったし、チームチャレンジカップのSPはU.S.インターナショナルから10点、つまり項目あたり2点上がっている! 8点台後半が普通に出るレベルになっている。
「(羽生結弦と)ようやく対比される場所まで来た」と言う宇野昌磨だが、同じ年齢のときの羽生結弦はどうだったかな?と思い返すと・・・
高1でシニアに上がり、高2で世界選手権銅メダル、高3で迎えた2012/2013シーズン。ブライアン・オーサーの指導を受け始めた。
SPは「パリの散歩道」で、GPスケートアメリカでいきなり当時の歴代最高得点を叩き出して世界を驚かせた。フリーは「ノートルダム・ド・パリ」でトウループとサルコウの2種類の4回転に挑戦、決まったり決まらなかったりだったが、グランプリファイナル2位、全日本で初優勝、世界選手権4位。世界のトップグループに定着したシーズンになった。
演技構成点を見ると、SPは38.60(フィンランディア杯)から43.43(四大陸)、フリーは78.78(NHK杯)から85.16(グランプリファイナル)の間。今季の宇野と比べると、SPはだいたい同じくらい、フリーは宇野のほうが少し勝ってる
羽生は早々とシニアに上がって、1年目2年目3年目と着実に力を蓄えてきた。宇野は少し長くジュニアに留まったが、その間に基礎的なスケーティング技術と表現力を伸ばしたことで、ジャンプが跳べるようになったとたんに高難度のプログラムが実現した。
「ノートルダム・ド・パリ」の羽生は、演技終盤はかなりへとへとになってたが^^; 宇野の体力はかなりのもの。なにしろ、フリー最後の3つのジャンプが4回転とトリプルアクセル
シニア1年目を宇野昌磨は「濃い一年だった」(日刊スポーツ)。本当にそうだろう ジャンプもさらに高難度の構成を考えているようだが、プログラム自体を高い完成度で仕上げてほしい。それだけの力が、もう備わっている。
怪我に気をつけて、頑張れ