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年齢制限17歳以上にする場合

2022年03月31日 02時39分43秒 | フィギュアスケート

 朝日新聞デジタルの記事「年齢制限17歳はふさわしい 日本選手が証明してくれたこと」を読んで、ちょっと考えてみた。
 フィギュアスケートの現行ルールでは、6月30日までに15歳以上になっていれば、シニアの国際大会に出られる。女子シングルではジュニアから上がったばかりの少女体型の選手が高難度のジャンプを次々跳んで上位を独占、しかし大人の体型になる20歳ごろには引退、という状況。「まだ体が成長中の少女の身体を守り、息の長い選手活動を推進するためにも、シニアに上がる年齢制限を上げるべきだ、という声は様々な関係者からも常に聞かれていた。」
 前回のISU総会で議題に上がったが否決されていたこの問題が、カミラ・ワリエワ選手のドーピング問題をきっかけに、今年の総会に向けて改正案が提出され、多くの理事が賛同を示しているとのこと。可決されれば、女子シングルだけでなく全種目で施行されるそうだ。
 記事の筆者・田村明子さんは「日本の選手にはほとんど影響がないだろう」「日本は過去に多くのトップ選手、チャンピオンを出してきたが、そのいずれもが息の長い活動を続けてきたから」という。ジュニアから頭角を現した樋口新葉、怪我に苦しんだ時期もあったが、北京五輪では3アクセルを成功させた。坂本花織は17歳でシニアデビュー、2度目の五輪で銅メダル、ついに世界女王になった。浅田真央さんは12年にわたるシニアのキャリア。と例を挙げている。
 実際、選手層の厚い日本女子は、シニアに上がっても上には上が常にいる 社会人になって続ける選手もいるくらいだから、いつまで現役をやるかは体力・気力・経済力で決まるといえそうだ。早くから才能を見せている選手は長く待たされることになるが
 もし「17歳以上」で決定した場合、次のミラノ五輪で一番影響があるのは今季全日本ジュニアチャンピオン、4回転トウループが跳べる島田麻央だ。2008年10月30日生まれ、2025年6月30日時点ではまだ16歳で、出場できないことになる。日本はISU総会で17歳案に賛成するのか 島田麻央の1つ上にもたくさん有望選手がひしめいているので、問題ないと考えているかも、、、

 女子以外の種目ではどうか。男子で15歳でシニアに上がってすぐ活躍したのは羽生結弦くらいだし、こちらも常に上には上がいるので 日本としては問題にならなさそう。待たされる選手はじれったいだろうけど。
 一方、ペアやアイスダンスは気になる。パートナーとの年齢差によっては、公式の競技会に全く出場できない時期が生じるかもしれないからだ。
 ジュニアの女性は13歳以上19歳未満、男性は13歳以上21歳未満。シニアは現行15歳以上。現在は男性が7歳上だと、女性14歳男性21歳のシーズンはジュニアもシニアも出られない。これがシニア17歳以上に改正されたら、男性との差が5歳でも、女性16歳男性21歳のシーズンにどちらも出られなくなる。年の差が大きければ大きいほど、どちらにも出られないシーズンが多くなってしまう。
 全日本選手権にただ1組出場した柚木心結/市橋翔哉組は、今年6月30日基準で16歳と24歳。ジュニアはもちろん出られないし、シニアにも出られなくなる可能性がある
 “りくりゅう”三浦璃来/木原龍一組は男性が9歳上。このくらいの年の差ペアは珍しくないので、新たにペアを始めたい選手にとっては、パートナー選びがより難しくなってくるかもしれない。ジュニアからシニアまでの年代に大会に出られないシーズンがあるとわかっていても組むなら、長期スパンでのサポートがほしい(国内競技会にはオープン参加を認めて、ちゃんと採点するとか)
 ペアはたいてい男性が年上だが、アイスダンスでは女性が年上の場合もある。キャシー・リードさんとクリス・リードさんは、キャシーさんが6月生まれ、クリスさんが2つ下の7月生まれ。6月30日基準だと3つ違いになり、女性19歳男性16歳のシーズンがあった。全日本ジュニア4位藤木翠/下川誠也組も今年6月30日基準で女性が19歳男性16歳になるので、来季シニアで滑れるのか気になるところだろう。
 五輪団体銅メダルでカップル競技への注目が高まっている今、強化のチャンス 興味を持ってやってみたいスケーターをしっかり取り込むためにも、連盟はちゃんと考えている、はず

 日本以外の国はどうだろうか。ロシアは「ジュニアのほうが高レベルの大会になる」と反対しそうだが むしろ競技人口が少なく選手層が厚くない国が悩ましいかもしれない。1人/組だけ国際大会の上位で活躍する選手がいても、五輪前年の世界選手権や五輪最終予選に年齢制限で送りこめないと、五輪出場はまた4年待たなければならない。4年後にその選手が活躍できる保証もない。五輪に出られるかどうかは国内での普及や強化に大きく影響があるだろうから、その4年は小さくない。まあ、どこの国も条件は同じだから仕方ないけど。

 実は、国内の大会も影響なしとは言えないと思っている。現在女子シングルのジュニアで地区ブロック出場資格が、「13・14歳=バッジテスト6級 15歳以上=7級」になっている。これは競技人口が最も多い年代で、どの地区も参加人数がすごく多いので、ある程度人数を絞るための措置かと思われ
 シニアの出場資格はバッジテスト7級以上。今までは7級が取れたら早めにシニアに移行も選べたが、より多くの選手がジュニアに長く残ることになる。また、15歳以上を7級としていたのは「シニアにも出られる年齢だから」と言えたが、15歳ではシニアに出られないとなれば、資格を7級とする理由にできないかも
 女子シングルのジュニアだけ、2日がかりでショートプログラムとかになったりして、、、まあ、連盟はちゃんと対策を考えるかな

 なんてあれこれ考えてみたが、改正の目的は選手の健康を守ること。その目的にかなうように進むことを祈る。
(それはそうと、記事に「現在のルールでは、オリンピックや世界選手権に出場するためには前年の7月1日の前日までに15歳になっていることが条件だ。GPシリーズは、それよりも1年早く参加できる。」とあるが、GPシリーズで1年早く参加できたのは2013/2014シーズンまで。2014/2015シーズンからは全てのシニア国際大会で15歳以上になっている。改正後8シーズン目なんだけど
 トリノ五輪シーズンにGPファイナル優勝した浅田真央ちゃんのイメージが強すぎたか このルールの恩恵を受けたのはエレーナ・ラジオノワまで、エフゲニア・メドベージェワの世代以降は15歳になるのを待ってのシニアデビューだった。
 信じ込んでいると確認しない、それで知識がアップデートされないってこと、あるんだろうな
<追記>
 上記の「GPシリーズは、それよりも1年早く参加できる。」は記事から削除されていました。朝日新聞デジタル、素早い対応

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