いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

『21世紀のインド人』

2004年09月19日 15時58分50秒 | インド
いか@ インド本を読む。

スーパーに食品を買いに行ったついでに覗いた本屋にあったインド本。『21世紀のインド人』、山田和。この人はこれまで多くのインドに関する本を出している。本の内容はインドの現実を、インドは経済成長していいぞ!という人々に、知らせることである。読んでいて夢がない。事実を根拠にいろいろ書いてあるが、本の主題がインドブームに冷や水を、というものであるから。例えば、インド人の「エリート」・上位カーストは菜食主義者であり、肉を食べないことを誇りにしていて、なんでも食べる人間を侮蔑する、といった話である。ただし、これが一般的であるのか、菜食主義者がなんでも食べる人間を軽蔑しているのか、おいらは知らない。確かにおいらが出稼ぎした職場ではベジとノンベジがいたが、それだけだと思うが。

その他事例を挙げて、インド人の文明的背景が日本の普通の感覚とはいかに相違があるかを説いている。特にインド人の商売人は身分制意識が身に沁みていて、下位と認識すると「奴隷」扱いすることなど。著者の経験とインド在住日本人の経験を基に述べている。ただしその経験は30年前からのもので、とくに在日印僑の話も出てくる。つまり、ここ10年間のインドの経済自由化の主体である経済人との交流の経験をも考慮してあるかは定かではない。

事例として、さらにナイポールの小説を挙げて、仕事分担問題がある。つまり、たとえばタイピングという職務をやらない人は絶対やらない。もしやらない人に強要すると大変になるという話である。このことについては思い当たるふしがある。おいらが出稼ぎした職場では、エンジニアはゴミを床に棄てる。ごみ箱ではなく。それを契約している清掃会社の作業員が掃除する。エンジニアはごみ処理をしない。おいらは、せめて床に棄てるのはやめろ。ごみ箱を設置しろと社長に要求した。もしかして、インドの慣習に合わなかったのかも。ごみ箱が設置されたかは確認せずおいらは去った。

副題は「カーストVS世界経済」である。つまりインドをカーストで象徴化させている。この10年の経済発展とカースト制度がどう関連するか、その機制はわからないが、旧カーストの中上位カーストが主体で新しい中産階級が形成されているのだろう。そして、今後は経済発展がカースト制度の無化にどう影響するか?が問題である。