国県の危機管理能力は最悪である。肉用牛に餌として稲藁を与えていたことが問題になっているが、一言でも国や県から指示があったのだろうか。それをやらないで、農家をさらし者にするというのは、責任転嫁ではないか。私の住む喜多方市でも、放射性セシウムで汚染された稲藁を与えていたことが発覚した。福島民友新聞は今日付けで「牛の餌に関する国、県の放射線検査は、東京電力福島第一原発事故後に成長した牧草を対象に行われてきたが、稲藁は検査の対象外だった」という記事を掲載している。行政が指導に乗り出さなかったために、今回の事態は引き起こされたのであり、人災そのものではなかろうか。さらに、もう一つ理解できないのは、県放射線健康リスクアドバイザーの山下俊一氏が、福島県立医大の副学長に就任したことだ。長崎大学を休職扱いにし、任期は来年の3月31日までだとか。福島県民の多くが、楽観論をまくし立てた張本人だということで、山下氏の発言に違和感を抱いている。よくぞそんな決定ができたものだ。就任にあたって「福島医大が診断、治療を担っていく必要がある」と臆面もなく語っており、腹が立ってならなかった。治療という言葉が出てくるのであれば、由々しきことではないか。それを承知していながら、今まで嘘を吐いていたのだろうか。お上の言うことを信じたばっかりに、福島県民は踏んだり蹴ったりなのである。その怒りが向けられるべきは、民主党政権であり、民主党系の佐藤雄平知事であるのは、いうまでもないことだ。
民主党政権と東京電力の大本営発表に、NHKですら疑問符を付け出した。「原子炉が安定的な冷却に達した」と自分たちで評価しても、もはや誰も信じなくなっているからだ。「原子炉の冷却に伴って発生した汚染水の浄化設備で、汚染水が漏れたりタンクの水位の設定を誤ったりするトラブルが相次いでいて、課題も残されたままです」とNHKもコメントを加えており、匙を投げたくなったのだろう。しかし、民主党政権の目にあまる嘘というのは、日本人がこれまでも繰り返してきたことであり、驚くには値しない。山本七平が書いていたように、「師団の名誉のため、軍旗の名誉のため、大隊の名誉のため、それにさしさわりがある事実は死んでも口にしない、それを口にするぐらいなら黙って死ぬ」(『一下級将校が見た帝国陸軍』)という集団倫理が、今も働いているのだ。組織を守ることのみが優先され、国家、国民は二の次なのである。先の戦争のときと同じように、楽観的な情報を意図的に流している。ステップワンからステップツウに向かって、前進しているかのように見せかけるために、必死に情報操作をしているのだ。あまりにも愚かではないか。いくら衝撃的であっても、原発事故の現実から目をそむけないことこそが、今こそ求められているのに。