我が国が混乱期であればあるほど、必ずや日本人は、精神的な拠り所を求めるようになる。柳田民俗学が注目されるのは、まさしくそんなときである。ともすれば私たちが耳障りのいい言葉を口にしてしまうのは、ある意味では人間としての弱さでもある。柳田国男はこの点についても『国語の将来』で触れている▼「心にもない雄弁美辞を陳列するのは、よくない事だということは当人が誰よりもよく意識している。しかしも果たしてその通りのことを実際に考えているのかと問いつめられたときに、実は口真似でしたと白状することは、中々できぬのが人情である。そのためについに言葉の方へわが心を殉じてしまって、逆な悲しい結果を生じた者も折々はあったのである」▼今回の東京オリパラの森喜朗会長辞任劇は、まさしく日本人が集団ヒステリー化したような現象を呈した。大方の人は、マスコミの報道に踊らされて「口真似」をしたのだと思う。「口真似」がもたらす悲劇に柳田は心を痛めたのだ。言葉の危うさを誰よりも知っていたのである。だからこそ、活字にも残されていない、無意識に日本人が受け継いできたものに目を向けたのだった。この世を去った先祖が子孫の生業を見守っているとの確信は、そこから生まれたのである。取り戻すべき日本民族の信仰とはまさしくそれなのであり、マスコミに踊らされて付和雷同してはならないのである。
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