草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

日本の保守主義者の哲学と天皇観

2023年09月18日 | 祖国日本を救う運動
 百田氏らが日本保守党を立ち上げた。その理念や政策については明確にされていないが、保守主義ということを考えるにあたっては、エドモンド・バークの『フランス革命の省察』(水田洋訳)の言葉がよく引き合いに出される。
「自然は省察なしに知恵であり、省察にまさるのである。革新の精神は、一般に利己的な気質と限定された視野との結果である。祖先をかえりみない人々は、子孫に期待しないであろう。さらに世襲という思想が、改良の原理をまったく除外することなしに、保守の確実な原理と伝達の確実な原理とを提供することを、イギリスの人民はよくしっている」
 そこで語られているのは、共同社会と過去への執着である。日本の保守主義者がお国のために散華した英霊を祀る靖国神社に参拝するのは、死者の眼差しを意識するからなのである。バークは職業の世襲についても理解を示しているが、それは貴族の存在を前提にしているからだろう。日本の場合はそれが皇室にあたるのだと思う。
 天皇に対して特別の感情を抱くのは日本の保守主義者の特長だが、葦津珍彦の「国体問答」が不二歌道会雑誌「不二」に掲載されている。それが新勢力社の『日本の君主制』(昭和41年)に収録されており、今読んでみても大いに参考になる。
 そこで葦津は「国家が、国の最高意志を決定し、国論の激しい論争に終止符を打って、一つの態度に決定せねばなえあないのは、戦争の時ばかりではない。国家は、国民の自由なる論争を必要するとともに、断固たる統一を必要とすることがある。この断固たる統一を必要とするときに、日本国は天皇の権威なくしては統一を保てない。それは日本の歴史にかんがみて明らかである」と述べたのである。
 いずれも橋川文三が編集解説した『戦後日本思想体系7保守の思想』に収められている解説文や文章である。何の定義もなしに保守主義を論じる愚だけは避けなくてはならないのである。

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