創作日記&作品集

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「わたしなりの枕草子」#291

2012-01-20 09:16:45 | 読書
【本文】
二百五十段
男こそ、なほいとありがたく
男こそ、なほいと在り難く怪しき心地したるものはあれ。いと清げなる人を棄てて、にくげなる人を持たるもあやしかし。おほやけ所に入り立ちする男、家の子などは、あるがなかによからむをこそは、選りて思ひ給はめ。およぶまじからむ際をだに、めでたしと思はむを、死ぬばかりも思ひかかれかし。人のむすめ、まだ見ぬ人などをも、よしと聞くをこそは、いかでとも思ふなれ。かつ女の目にもわろしと思ふを思ふは、いかなることにかあらむ。

 かたちいとよく、心もをかしき人の、手もよう書き、歌もあはれに詠みて、うらみおこせなどするを、(=男は)返事(かへりごと)はさかしらにうちするものから、寄りつかず、らうたげにうち嘆きてゐたる(=女)を、見捨てて行きなどするは、あさましう、おほやけ腹立ちて、見証(けんそ)の心地(=第三者から見ても)も心憂く見ゆべけれど、身の上にては、つゆ心苦しさを思ひ知らぬよ。

【読書ノート】
ありがたく=奇妙な。怪しき=理解できない。おほやけ所=宮中。まだ見ぬ人=宮使いしている才能のある未婚の娘。通説の「会ったこともない」を間違いとする。→萩谷朴校注。二,三他の口語訳を参照しましたが、全部後者ですね。うらみおこせ=恨んで手紙をよこす。さかしら=体裁良く返事だけは。行き=(他の女のもとに)。おほやけ腹=むかっ腹。見証(けんそ)の心地=はた目。身の上にては、つゆ心苦しさ=(当人の問題となると)身の上にては、つゆ(女の)心苦しさ。女は男を。男は女を。分からないのは今も昔もですね。理屈では分からない。清少納言は意外と良識派ですね。