創作日記&作品集

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「わたしなりの枕草子」#299

2012-01-28 07:58:42 | 読書
【本文】
二百五十八段
うれしきもの①
うれしきもの まだ見ぬ物語の一(=第一巻)を見て、いみじうゆかしとのみ思ふが、残り見出でたる。さて、心劣りする(=期待外れ)やうもありかし。
人の破(や)り捨てたる文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。
いかならむと思ふ夢を見て、恐ろしと胸つぶるるに、ことにもあらず合はせ(=夢判断)なしたる、いとうれし。
よき人の御前に、人々あまた候ふをり、昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせ給ふを、われ(=清少)に御覧じ合はせてのたまはせたる、いとうれし。
遠き所はさらなり、同じ都のうちながらも隔たりて、身にやむごとなく思ふ人のなやむ(=病む)を聞きて、いかにいかにと、おぼつかなきことを嘆くに、おこたりたる由、消息聞くも、いとうれし。
思ふ人の、人にほめられ、やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。もののをり、もしは、人と言ひかはしたる歌の聞こえて、打聞(うちぎき)などに書き入れらるる。みづか(=清少自身)らのうへにはまだ知らぬことなれど、なほ思ひやるよ。

 いたううち解けぬ人の言ひたる故(ふる)き言の、知らぬを聞き出でたるもうれし。後(のち)にものの中などにて見出でたるは、ただをかしう、これにこそありけれと、彼(か)の言ひたりし人ぞをかしき。

【読書ノート】
同じ続き=同じ(手紙の)続き。合はせ(=夢判断)なしたる=夢判断してくれる。人々あまた候ふをり=女房が多数控えている時。われ(=清少納言)に御覧じ合はせて=私と目を合わせて。おこたり=病気が良くなる。口惜しからぬ者=しっかり者。聞こえて=評判になって。打聞=聞いたままに書き留めておくこと。思ひやる=想像する。故(ふる)き言=故事、古い詩、古い歌。彼(か)の言ひたりし人=いたううち解けぬ人。聞き出でたる=(他の人から)。最後の文は清少納言の「良いものは良い」の心ですね。あまり親しくない人なので、本人には聞けず、他の人から歌について聞いたり、書き物の中に発見した時の喜び。作者に対する懐かしさ。まさに「枕草子」を読んでいて感じることです。