永井裕子さんは若手の演歌歌手の中でも、円熟したなかなかいい味の歌唱を聴かせてくれるという点では際立った存在だと思います。平成12年6月のデビューなので、もうすぐ10年目を迎え、中堅どころとしてますます活躍が期待できます。
彼女は一昨年の「石見路ひとり」そして昨年の「和江の舟唄」と、島根県大田市のご当地ソングが続きましたが、今回の「望郷岬」は、伊豆半島の東伊豆町稲取に舞台を移しています。先の2曲は割合明るい曲調で、歌詞にも「地酒をちびり」や「煮汁ぶっかけ」などの面白い表現がありましたが、今度の「望郷岬」は、夢破れて故郷をしのぶ女性の心情をしみじみと歌い上げる抒情演歌になっています。
歌詞に出てくる「雛のつるし飾り」は、このCDのジャケ写に見られるものです。私はこれまで知らなかったのですが、稲取に江戸時代から伝わる桃の節句の風習だそうです。雛壇の両脇にいろいろな細工をつるして飾り、稲取温泉では観光イベントにもなっているようです。
こういう新しい知識を得ることができるのも、歌の楽しみの一つと言えるでしょう。
24日のNHK歌謡コンサートは、永井裕子さん、あさみちゆきさんが揃って出演なので見逃せません。