黒川真一朗さんは2003年(平成15年)のデビューですから、彼も平成の後半を駆け抜けてきた歌手です。望郷演歌、レトロな感じの軽味の歌、酒場ものなど色々なタイプの曲を歌って来ましたが、昨年2月発売の『風の町哀詩』は、男のせつない旅情演歌という感じで、けっこう彼に合っていると思いました。
2月20日に発売された彼の新曲『月草の宿』も『風の町哀詩』と同じ傾向の曲で、伊豆の天城を舞台に、別れた女性のおもかげをたどって旅をする男性が主人公です。
彼の声にはいわゆる泥臭さがなく、爽やかさが持ち味なので、こういった未練やせつない心情を歌った曲を聴いても、さっぱりとした印象があります。渋くてアクの強い歌もそれはそれでいいのですが、彼はこういう爽やか路線で存在感を示していけばいいと思います。
「月草」とは「つゆ草」の別名で、「令和」の出典として話題の万葉集にも詠まれており、すぐにしおれて、花の色もあせやすいので、人の心が移ろいやすいことのたとえに用いられるとのことです。そのことをふまえておくと、この曲の持つ情感がより深く理解できるように思います。
じっくり味わって良さが感じられる曲なので、カラオケファンにはこれからも着実に愛好されていくことと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=rV8I89tviWo