今回も女性演歌歌手で、杜このみさんの6月21日に発売された新曲『葦風峠』です。この曲は彼女のデビュー10周年記念曲とのこと。もう10年になるんだなというのが実感です。私は歌手としての細川たかし氏はあまり好きではないですが、師匠としては優秀で、弟子にはこの杜このみさんを始め、彩青さん、田中あいみさんなど有望な若手が多いですね。
10年前に『三味線わたり鳥』でデビューした杜このみさんは、幼い頃から民謡で鍛えた歌唱力を武器に、着実に人気を得てきました。また2020年には大相撲の高安関と結婚し、2021年には第一子、2022年には第二子を出産し、その間は休業状態でした。
コロナ禍で出来ていなかった挙式も今年6月21日に終え、新曲の発売も挙式日に合わせたわけです。
3年ぶりの新曲は、彼女にとって挙式を終えた節目で、新たなスタートに立つという意味でも記念すべき曲になりますね。
曲の内容は、遠くへ去った恋人を待ち続ける女性主人公の切ない想いがテーマです。タイトルの葦風峠は実際の地名ではないようで、歌詞に「葦笛が今日も鳴きます」とあるので、このへんからの発想かと思われます。
メロディー的には演歌の定番で特に目新しいものはないですが、歌詞はなかなか優れていると感じました。
まず歌い出しの「石になるほど待ち続け」の表現がインパクトがあります。「石の上にも三年」ということわざがあり、歌詞にも「椿も三度散りました」とあるのでここでも三年待っているのですが、その自分が石になってしまいそうというのがうまい表現だと思います。
そして2番の「どこのどなたに迷子になった」も面白い表現で、これは誰か他の人を好きになったのかとの問いかけで、それを迷子と言わしめるのは心憎い感じがします。
各コーラスの最後を「葦風峠」のタイトル語句で締めているのは、収まりがよくて、曲に重みを持たせる効果があります。
彼女の持ち味の哀愁を帯びた歌声は絶妙で、これは天性のものだなと改めて実感します。
演歌ファンにはおすすめの素晴らしい曲です。心機一転で歌手活動を再開した彼女には頑張ってもらいたいです。