婦人1
N95のマスクをつけ、背中が丸くなった婦人が
桃やネクタリンにプラムが置かれた棚の前に立っていた。
コロナが遠い昔になった今、
マスクをしている客は非常に少ないので
マスクを それもN95を着けている人を見ると
距離を少々おくようにしているけれど
高齢ともある婦人が気になり
声をかけると
”この桃はミシガン ピーチですか?
広告以外どこにもそう書かれてませんが” と
その婦人は手にしていた店の広告を私に見せ訊いた。
年齢は多分90代と思われるけど
頭がしっかりされた婦人だった。
マスクで顔の半分が隠れ
婦人の表情が分かりにくかったので
感情が伝わってこず残念だった。
桃の話が終わり その場を去ろうとした時
”貴方 どこご出身?” と私に訊く。
”日本です。(I am originally from Japan.)”
と言うと
婦人が
”おーーーー” と
目を見開き上半身を少々仰け反り驚かれた。
(えっ?)
婦人2
ケールをビニールの袋に入れていた婦人に
”スムージーに使われるんですか?” と
何気なく訊くと
婦人がケールは料理に使うと言いその話から
家族の話や冬の間住むテキサスの話など
それは長い時間自分の話を私にするので 驚いた。
客を知るのも仕事だろう と思いながら
婦人の話を聞いていた。
年齢は60代だろう 背丈は私と同じぐらいだけど大柄の婦人だった。
婦人3
婦人3は向こうから私に話しかけてきた。
お互い知っているように話す彼女の顔をじっと見つめても
誰だったか思い出せない私は 少々パニック
”でもどっかで見たことのある顔やなぁ”
と 思いながら
知っているようなフリをして婦人と会話をしていた私は
ハッ と気づいた。
元小学5年生の教師でラインダンスで一緒の婦人だ。
2日前とまったく違った雰囲気だったので
すぐに彼女と分からなかったのだ。
キャップをかぶって やたらウキウキされ話し
時々、腰まで左右に振られる。
顔はしわくちゃだけど
動作はティーン
そしてこう言われた。
”貴方 ほんとダンスがお上手ね”
下手とは言われても 上手だ!など言われた試しがない私が
”そんな事言ってくれるのは貴方だけですよ
夫は私のダンスが下手だと言って一緒に踊ってもくれないんです。”
と 自分は寂しい妻でもあるかのように言った私は
再来週の月曜日にあるバーでのダンスに行くつもりだ と伝え
その後
”その日は私の誕生日なんですよ。” と
パーティーだぁ~ とでも言うように
少々はしゃいで伝えたら
婦人は目を見開いて
”忘れないようにメモしておかなくっちゃ。” と
楽しみにしているように言って去った。