日々の覚書

MFCオーナーのブログ

“いいかげんなおせっかい”をあなたにも

2009年12月24日 23時00分45秒 | 音楽ネタ

Printedjelly

今日はクリスマイ・イブだが、それとは関係なく、天皇誕生日だった昨日の夜、新宿のCrawdaddy Clubで行なわれたセッションに参加してきた。テーマはオール・ジャンルという事で、とは言っても、HR/HM系の曲が多かったような気がするが、30曲以上も演奏され、店内もプレイヤーで溢れんばかり、非常に盛り上がっていた。電車がなくなるので、最後まで聴かずに店を後にしたのが、実に残念だった。

で、そのセッションで何を演ってきたのかというと、今回は一曲入魂、なんと四人囃子の「ハレソラ」である。エントリー表にこの曲があるのを見つけて、誰かに先を越されてはたまらん、と慌ててその場でエントリーしたのだが、正直成立するとは思わなかった(笑) いやいや、それにしても、セッションとはいえ「ハレソラ」を演奏出来るなんて、感激の極みである。「一触即発」のときも、同じ事言ったけど(笑)

この曲、四人囃子が1977年に発表したアルバム『Printed Jelly』の冒頭を飾っている。いやはや、初めて聴いた時は、大げさでなくブッ飛んだ。こんなカッコいい曲をやってる日本のバンドがいるなんて、ほんと衝撃だった。確かに、四人囃子は知ってたし、前作『ゴールデン・ピクニックス』が出た時、レコード会社もかなりプッシュしたのか、FMでよくかかってたから、全く聴いた事がなかった訳ではない。ただ、「ハレソラ」の四人囃子は、それ以前に僕が知ってた四人囃子とは、明らかに違っていた。こんなにストレートで分かりやすいバンドではなかった。それもそのはず、『Printed Jelly』は、ギターの森園勝敏が脱退し、新メンバーに佐藤満を迎えての、新生四人囃子の初アルバムだったのである。曲作りの中心が森園から佐久間正英に移ったことで、音楽性が大きく変化した。

単にそれだけではない。四人囃子をプログレに括って考えてみた場合、この頃、つまり70年代後半は、プログレが失速し始めた頃に当たり、欧米のプログレ・バンドたちは、それまでの重厚長大な音作りから、もっとポップな方向への転換を模索し始めていた時代なのであり、四人囃子もその潮流を敏感に感じ取って、音楽性をシフトさせていった、とも言える訳で、そこいらの嗅覚の鋭さは、やはり只者ではない。その結果が、この『Printed Jelly』なのであり「ハレソラ」なのである。

と、能書きたれるのはこのくらいにして(笑)、とにかく「ハレソラ」今聴いてもカッコいい曲である。イントロ→歌1番→歌2番→間奏→歌3番→間奏(ギターソロ)→歌4番→エンディング、と実に分かりやすい構成なのも良いが、シンプルに始まった歌が、1番、2番と進むにつれ、コーラスが増えたり、ギターのオブリカードが加わったり、とアレンジに工夫を凝らしているのも見事だ。2回入る間奏の流れも、実にスムーズで無駄がなく、凝ってはいるものの、奇を衒った感じは一切ない。また、ギターソロが終わった後、イントロのパターンに戻って4番になるのだが、この4番に入る前にブレイクがあり、そこへ切り込んでくるドラムのフィルが、言葉もないくらいカッコいいのである。どこを取っても完璧としかいいようがない。至福の6分30秒。これを名曲と言わずして何と言う。

この「ハレソラ」の凄い所は、隙なく構築されているようでありながら、ロック特有のダイナミズムを失っていない点だ。ギターもボーカルもドラムも、全てがイキがよく、聴く者を煽り立てる。小節数とか無視して、自由奔放にも演奏出来る余裕も、しっかりと残されている。だからこそ、30年以上経った今でも色褪せないのだ。

この曲、実はギターを基調に作られていて、最初から最後までギターが鳴りっ放しという曲でもある。サウンドの骨格はあくまでもギター、そしてベース、ドラムであり、シンセはその基礎の上に成り立っているのだ。ギター弾きながら歌うのは大変だろうな、という気がするけど、実際、1978年頃の四人囃子のライブを聴いてると、「ハレソラ」を演奏する時、佐藤満は相当キツそうである。歌とギターと両方に気を遣って、どっちらけ状態。ソロの時になると、生き生きと弾きまくってるので、やはり歌がかなり負担だったのだろう。

サウンドだけでなく、歌詞もこのアルバムでは重要だ。と言っても、何を訴えかけるのではなく、単にメロディに“言葉”が乗っかっている、という、考えようによっては画期的な日本語の歌詞によるロックなのである。意味があるようなないような、情景が浮かぶような浮かばないような、だけど疑いようもなく日本語であり、言葉のイメージを限定していないから、“ロックのリズム”にもすんなり乗れる。しかも、特定の歌い手だけに可能な表現ではなく、誰が歌っても、ある程度はリズムに乗れる歌詞だ。“日本のロック”誕生以来、多くのミュージシャンが格闘してきた、“日本語のロック”という永遠のテーマをクリアする方法論を、四人囃子はこのアルバムで提示してみせた。この事は、もっと評価されて然るべきではないか。

当然の事ながら、「ハレソラ」を含む『Printed Jelly』は名盤であるので、他の収録曲も素晴らしい曲ばかりだ。世間の四人囃子ファンの大半は、森園時代のファンでもあるので、佐藤満加入以降の四人囃子に対して、批判的な人も少なくない。「佐久間が四人囃子をダメにした」と言う人もいるそうな。悲しい事である。音楽性が変化した事が許せなかったのだろうけど、その変化は、決して彼らの内面だけの問題ではなかった訳で、あの時代を生き抜いていくには必要だったのだ、と思う。森園時代も好きな僕としては、全てのファンに『Printed Jelly』も受け入れて貰いたい。そういう点で、90年代以降、何度か再結成してはライブをこなしている四人囃子だけど、森園時代の曲しかやってないのは、非常に残念である。

“いいかげんなおせっかい”をあなたにも by 佐久間正英

コメント (6)
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