Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 19

2019-07-19 16:13:53 | 日記

 ああ、この前話したが、あれは私にはそう言っていた。

「あの子のこれまでの人生で、お前に叩かれたのが一番の嫌な思い出だそうだ。」

祖父のこの言葉に、「そんな、…」祖母は思ってもいなかった真実を突然告げられた形になり、彼女は事ここに置いて酷い衝撃を受け、その為放心状態の体となった。

 「あの子の為に、」「心を鬼にして、」「感謝されこそすれ恨まれていたなんて、…」等々。祖母の震えるような声がうわ言の様に繰り返されると、力ない彼女の声が私のいる場所に迄伝わって来る。

「恨むまでは、…行っていないと、思うがなぁ。」

祖父は何やら考えながら妻に言った。彼はふっと嘆息気味に息を吐いたが、

「まぁ、子供の事はその親に任せるのが一番良いんじゃないのかね。」

と結論した。

「流石、父さん、男同士だなぁ。」

父の喜ぶ声が仏間から聞こえた。祖母はそれっきり声を発しなかった。私の所へは父と祖父の朗らかな声が伝わって来るのみとなった。

 その後の2、3日は、スパルタ教育の言葉と、情操教育、自由思想、等々の言葉が、主に父と祖母の間の話に取り交わされていた。私には全く意味が分からず聞き流すだけの言葉だった。が、祖母はご近所の馬鹿息子、ドラ息子、あれをご覧、親が叱らないから、甘やかすから、等々、あんなになるのだ。と言う言葉は理解出来た。

 しかしなぁ母さん、今はそういう思想なんだ。子供本位なんだ。個人主義だ。等、父は大学出の学のある所で自身の母に思う存分に知識を披露していた。挙句、私は祖母が一人、肩を落として彼女の鏡台の前にペタンと座り込み、静かに目頭を押さえている姿を見るに至った。それは幼い私の目で見ても、祖母が悲しみに沈んで泣き伏している姿としか見えなかった。

「お祖母ちゃん、何か悲しい事があったの?」

私はその祖母の姿に、こう声を掛けずにはいられなかった。繰り返し問い掛ける私の声に、祖母は何も返事をして来ない。到頭私は自分の声が彼女に聞こえていないのだろうと一人合点すると、祖母の連れ合いである祖父に祖母の現状を訴えに行った。祖父は私の話を聞くと、やはり祖母同様肩を落とした。は~っとばかりに深々と溜息を吐いた。

 「今頃、人生の今頃になってこういう目に遭うとは。」

もう終わりも近付いて来る今頃になって…。嘆息気味にこう言葉を漏らすと、祖父も何やら目頭を熱くしているようで、我が家の現状を全く理解できない私には、家では何事が起こっているのだろうと唯々不思議に思うばかりだった。

 その人の、明らかに泣いている姿をはっきりと見なかったとはいえ、どちらかと言うと祖父の目の方が厚ぼったく赤くなり腫れているのを現実に私は目にする事になった。

「お祖父ちゃんの目、目の周りが変!。」

祖父の目の周囲の皮膚が赤くなりたるむ様に腫れていた。私にはその祖父の、常には見た事が無い異常な皮膚のたるみと紅色が、祖父が何か悪い病気に罹患している事の発露である様に見えた。私は祖父の身を案じるあまり、祖父は医者に行った方が良い、父か祖母が祖父を医者に連れて行った方が良い、と、繰り返し声を大にすると、周囲の家族に訴えずにはいられない状態へと追い込まれて行った。この時の祖父の目は、『恰も李を二つつけたよう…』という、あの物語の例えの状態にも匹敵するように誰にも見受けられただろう。 


今日の思い出を振り返ってみる

2019-07-19 16:07:35 | 日記
 
土筆(132)

   僕がいなければあの子はこの時点でもう存在しなくなるんだ。もしこの世界に僕が存在していても、あの子と出会わずにいれば社会的な今の僕は無いんだ、多分ね。これが因縁というものなんだ......
 

 昔の文章は、ほんの1年前なんですが、まずいなぁと思う個所が有りますね。


在庫あります。

2019-07-19 15:54:18 | 日記

 以前、自費出版した「めいぷるしろっぷ」、本の在庫がまだあります。

ご希望の方は、書店でお取り寄せなさってくださいね。沢山の方に読んでいただけると嬉しいです。

1月ほど前、6月の在庫数です。今日届きました。

遅くなりましたが。ご購入いただいた皆様にはどうもありがとうございました。

重ねてお礼申し上げます。