碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

はまみつを『白樺教師 中谷勲』のこと

2010年09月05日 | 本・新聞・雑誌・活字

中学校時代からの恩師・浜光雄先生を訪ねた。

12歳で先生に出会い、師事すること、今年で43年になる。

年に2回、恒例の報告会というか、話が肴の“ふたり飲み”(笑)である。

飲みながら、半年間の出来事、してきたこと、思ったことを、互いに出し合っていく。

昼12時から始めて夕方まで。

なんとも愉快で、贅沢な時間だ。


浜先生は、童話作家「はまみつを」である。

先生の、児童文学界における師匠は大石真であり、大石先生の師匠は坪田譲治だ。

滔々たる文学DNAの流れ・・・・

77歳になる先生は、現在も原稿用紙に向かい続けている。

近著『白樺教師 中谷勲』(郷土出版社)は、信州白樺教育を代表する一人、中谷勲(なかやいさお)の生涯を描いた絵本だ。

信州白樺教育は、武者小路実篤らの雑誌「白樺」が唱えた個性尊重の精神を教育の場にうつし、実践しようとしたものだ。

だが、当時の社会では、白樺教師たちの行動は認められず、異端者、危険思想、非国民という扱いを受けた。

ひたすら子どもたちのことを思う教師以上の教師などあり得ない。

先生は、中谷勲を「愛の教師」と呼んでいる。

現在の信州教育界に、どんな形であれ“白樺のDNA”が継承されているのか、いないのか、それはわからない。

ただ、浜先生と向かい合っている時、「ここに一人の白樺教師がいる」と、いつも思う。

やはり、愉快で贅沢な時間だ。