碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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写真集『山田脩二 日本旅 1961-2010』を見る

2010年09月22日 | 本・新聞・雑誌・活字

写真は、撮るのも、見るのも、好きだ。

最近、気がつくとパラパラめくっているのが、『山田脩二 日本旅 1961-2010』(平凡社)。

何しろ50年分の日本が詰まっている(笑)。

飽きない。

たとえば60年代初頭の渋谷。

駅前のバスのロータリーに人々が並んでいる。その俯瞰の写真を眺めているだけで、なんだか胸がいっぱいになる。

63年から64年頃の木曽平沢。

故郷の町に近い漆器の里だ。山と川に挟まれた長細い集落の姿は、今と変わらない。町を貫く一本道を歩く人たち。足元の雪は凍っているようだ。

漆職人のおじいさんが一服している。モノクロ写真に定着されたタバコの煙。いいなあ、と口に出てしまう。

69年の新宿駅西口広場。

道路にも、歩道橋の上にも大群衆だ。騒然とした空気が伝わってくる。

77年の札幌・ススキノ。

コンクリートむき出しのビルに風俗店の看板。ああ、こんな風景だったんだなあ、と思う。

80年代、90年代の写真は少ない。

山田脩二さんは、80年代の初めに職業写真家(カメラマン)をやめて、淡路島で瓦師(カワラマン)に転身してしまったからだ。

だが、2007年から2010年にかけての淡路の写真が載っている。

田んぼの風景や、畔で一休みする男衆の姿は、なんだか70年代と地続きのようで、ちょっと可笑しく、そして、ほっとする。