写真は、撮るのも、見るのも、好きだ。
最近、気がつくとパラパラめくっているのが、『山田脩二 日本旅 1961-2010』(平凡社)。
何しろ50年分の日本が詰まっている(笑)。
飽きない。
たとえば60年代初頭の渋谷。
駅前のバスのロータリーに人々が並んでいる。その俯瞰の写真を眺めているだけで、なんだか胸がいっぱいになる。
63年から64年頃の木曽平沢。
故郷の町に近い漆器の里だ。山と川に挟まれた長細い集落の姿は、今と変わらない。町を貫く一本道を歩く人たち。足元の雪は凍っているようだ。
漆職人のおじいさんが一服している。モノクロ写真に定着されたタバコの煙。いいなあ、と口に出てしまう。
69年の新宿駅西口広場。
道路にも、歩道橋の上にも大群衆だ。騒然とした空気が伝わってくる。
77年の札幌・ススキノ。
コンクリートむき出しのビルに風俗店の看板。ああ、こんな風景だったんだなあ、と思う。
80年代、90年代の写真は少ない。
山田脩二さんは、80年代の初めに職業写真家(カメラマン)をやめて、淡路島で瓦師(カワラマン)に転身してしまったからだ。
だが、2007年から2010年にかけての淡路の写真が載っている。
田んぼの風景や、畔で一休みする男衆の姿は、なんだか70年代と地続きのようで、ちょっと可笑しく、そして、ほっとする。