2018年06月26日
北海道機船漁業協同組合連合会 常務 原口聖二
[日本EEZにおける日本漁船のためのスルメイカのTAC設定の経緯と加味されていない漁獲情報等]
1.韓国は新日韓漁業協定に向け、2007年度からイカのTAC設定を開始した。
2.日本近海のスルメイカは冬に東シナ海で生まれ主に太平洋を北上するグループ(冬季発生系群)と、秋に日本海で生まれ日本海を回遊するグループ(秋季発生系群)がある。
3.昨年2017年度、資源のABCは秋季発生群15万6,000トン、冬季発生群6万9,000トンと評価された。ABCには、韓国の漁獲が含まれており、日本はこれまでは韓国の直近5ケ年漁獲平均値を差し引いてTACとしてきたが、当該年度は、低下している資源に配慮し、過去10年間の日本EEZの漁獲割合の最大値60.1%を係数として、設定勧告を行った。このことから、日本EEZにおける日本漁船のためのイカの昨年2017年度のTACは、前年比47%減の13万6,000トンとなった。一方の韓国はこれを削減せず前年同の14万1,750トンを設定した。
4.本年2018年度、資源のABCは秋季発生群12万9,000トン、冬季発生群3万1,000トンと評価された。これらの合計値には、やはり韓国分の漁獲が含まれており、当該年度も同様、過去10年の内、全漁獲量に対する日本EEZの漁獲割合の最大値60.1%を係数として設定勧告を行った。このことから、日本EEZにおける日本漁船のためのイカの本年2018年度のTACは、前年比29%減の9万7,000トンとなった。一方の韓国は、2017年にTACの運用期間の変更を決定、1月-12月から7月-翌年6月となり、2018年の前期暫定分として2万9,066トンを設定した。また、次期2018年漁期(2018年7月-2019年6月)の設定については、当初、前年度期より30%以上削減の9万4,257トンで決定したが、これに追加的に、最近、魚群形成が確認されている西海のトロール漁船向けに1万6,997トンを試験運用として新たに設定、計11万1,254トンで、実質2割程度の削減にとどめた。
5.過去、2017年のTAC設定において日本は前年2016年より、おおよそ半減させているが、韓国は一切削減せず、2017年についても前年2016年同の設定をしており、2016年を起点とした削減率に大きな違いがでている。
6.2016年から日韓漁業交渉が妥結に至っておらず、現在、相互の相手国EEZにおける操業は行われていないが、同漁業協定に基づく韓国漁船の日本EEZにおけるイカの漁獲割当は約1万トンで、一方の日本漁船の韓国EEZにおける漁獲割当は3,300トンだった。ただし、暫定水域の操業は現在も継続されている。
7.なお、現状、明らかに資源がまたがっている次の漁獲情報が加味されていない資源評価とTAC設定になっていることが指摘される。
①北朝鮮水域における中国漁船操業(日韓EEZよりはるかに大きい漁獲をしているとの情報がある)
②ロシア水域でのロシア国内漁船による沿海地方海域、西サハリン海域、南クリール海域操業
③ロシア水域沿海地方海域でのロ韓、ロ朝、ロ中漁業協定に基づく各国漁船の操業
④日本海を中心とした北朝鮮の違法操業
⑤その他