2021年01月15日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[“帰ってきたダリキン”続くオリガルヒによる水産業界M&A]
ロシア大手漁業会社ナホトカ海洋漁業基地(Находкинская база активного морского рыболовства:ナホトカ・バムル)のオーナで元沿海地方知事*ダリキンが、オケアン・ルイブフロート(Океанрыбфлот)の資産を手に入れる可能性がある。
この合併により年間の漁獲割当は46万トンに達し、業界のリーダーとなる。
2020年12月、公開された情報によると、ナホトカ・バムルの関係企業としてオケアン・ルイブフロートがリストされている。
フォーブス誌によると、ナホトカ・バムルの年間漁獲割当は18万1,000トンで、2019年の漁獲量は前年比22%増加、17万2,490トンとなり、グループの収益は126.6億ルーブル、税引き前利益は38.6億ルーブルだった。
一方、オケアン・ルイブフロートは、最大手漁業会社の一つで、2019年の漁獲割当は28万2,800トン、2018年の収益は266億ルーブルと見積もられている。
これらの実質的オーナは、カムチャツカ地方選出上院議員ポノマレフ、同地方議員エヴトゥショクとされている。
情報筋は、既に、ダリキンがオケアン・ルイブフロートの一部等を買収した可能性を示唆しているが、ナホトカ・バムル、オケアン・ルイブフロートは、まだ何も発表しておらず、エヴトゥショクも当該動向に関する照会にこたえていない。
業界関係者は、オケアン・ルイブフロート買収のための費用を見積もるのは困難だとしているが、2018年の税引き前利益は35億ルーブルと報告されており、公開された最新の財務情報に基づき同業界の平均的なインデクスで試算すると、最大280億ルーブル(現在の中央銀行のレートで3億8,000万ドル)と見積もられ、ここ数年で最も大きなM&Aとなる可能性がある。
2018年、サハリン選出の元上院議員ベルホフスキーの関連グループが、現沿海地方知事で当時のサハリン州知事コジェミャコの家族からプレオブラジェンスカヤ・トロラヴォガ・フロータ(Преображенская база тралового флота)を買収した費用は4億ドル以上と評価された。
また、2013年に、ロシア水産投資企業グループ“ルスコエモーレ”「ロシアの海」(“Русское море”当時代表ゲンナジー・チムチェンコ/後にロシア漁業会社РРПК:グレブ・フランク)による太平洋科学調査船団”トウルニフ”(Тихоокеанское управление промысловой разведки и научно-исследовательского флота)、ソフガヴァニルイバ(Совгаваньрыба)、イントラロス(Интрарос)そしてヴォストークルイブプロム(Востокрыбпром)の買収額は計5億4,000万ドルだった。
オケアン・ルイブフロートとナホトカ・バムルの合併により年間の漁獲割当は46万トンに達し、業界最大のグループに躍進する。
現在、オルロフのノレボ(Норебо)が43万トン、ベルフスキーのギドロストロイ(Гидрострой)グループ41万トン、そしてロシア漁業会社が33万トンとなっている。
ノレボ副代表セニコフは、オケアン・ルイブフロートとナホトカ・バムルの合併が、彼らへの融資を活発にさせ、投資を拡大し、業界懸案の漁船団の更新、建造に貢献することになると指摘した。
*セルゲイ・ミハイロヴィチ・ダリキン(Сергей Михайлович Дарькин)
“太平洋投資グループ”(Тихоокеанская инвестиционная группа:チホーオケアンスカヤ・インヴェスチツィオナヤ・グルーパ)代表
1963年12月9日生 沿海地方ボリショイ・カーメニ出身 実業家 政治家
ロシア極東の元沿海地方知事(2001年-2012年)。ウラヂオストクで港湾労働者として働き始めるかたわら、極東航海大学に学び、1985年同大学を卒業し、大学院に進む。極東航海大学を卒業後、1989年ダリジング社副社長に就任。1991年にはロリズ社を設立した。同社は造船業、次いで水産業に進出した。1998年沿海銀行頭取となり、2001年沿海地方知事選挙に立候補するまでロリズ・グループの総帥として君臨した。
2001年2月5日、当時の沿海地方知事ナズドラチェンコは辞意を表明した。同年1月に心臓発作を理由に入院していたが、ナズドラチェンコの辞任は、沿海地方におけるエネルギー危機によるものであり、大統領プーチンによる事実上の解任であった。ダリキンはナズドラチェンコの後継を選ぶ知事選挙に立候補し、同年5月27日の第1回投票で得票率24パーセントを獲得し、1位となった。同年6月17日の決選選挙で、40.17パーセントを獲得し、6月25日に正式に知事に就任した。2005年1月の法改正によりロシア連邦を構成する連邦構成主体の首長(知事、行政長官)は大統領の任命制になったが、ダリキンはこの改正後に就任した最初の知事だった。
(関連過去情報)
2012年11月26日 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア大手“ルスコエモーレ”「ロシアの海」が極東漁業会社4社買収へ]
ロシア水産業界紙は、ロシア水産投資企業グループ“Русское море”(“ルスコエモーレ”「ロシアの海」)が、スケトウダラ、ニシン等の漁獲割当をもつ極東漁業会社“ТУРНИФ”(トウルニフ)、“Интрарос”(イントラロス)、“Востокрыбпром”(ヴォストークルイブプロム)、そして“Совгаваньрыба”(ソフガバニルイバ)の4社の買収を進めていると伝えた。
買収金額は約5億ドルとされる。
“ルスコエモーレ”「ロシアの海」は今年2012年3月に、ロシアの漁獲の20-30%を獲得することを短期的戦略目標におき、ロシアだけではなく、世界最大の漁業会社となる計画を示していた。
アナリストは、このようなアイデイアは、石油トレーダーで大統領プーチンの親友でもある“ルスコエモーレ”主要株主のチムチェンコによるものだとしている。
この4社は、ロシアスケトウダラ漁業者協会(報告担当者:原口聖二*現在、ロシア独占禁止庁から独占禁止法違反で提訴されている)の主要構成会員船主で、これらの所属漁船は合計11隻、今年2012年の総漁獲量は18万8,700トン以上で、TACの占有率は10.7%に達することになる。
さらに、衝撃なのは、“ルスコエモーレ”が、ロシアスケトウダラ漁業者協会の会員船主を少なくても1ダース以上入手する計画を示している点であり、今後の極東漁業の再編に大きなインパクトを与えるものと予想される。
2012年10月26日 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[極東漁業会社と業界団体の独禁法違反にかかる第1回目の会合が行われる]
ロシア連邦独占禁止庁は、2012年10月23日、ロシア極東の53の漁業会社とロシアスケトウダラ漁業者協会にかかる独占禁止法違反、ロシア海域のスケトウダラの漁獲枠を不当に管理しているとされる中国企業“パシフィックアンデス”(PacificAndes International Holdings)との提携に関する調査報告についての第1回の会合が行われたと発表した。
これらの極東の漁業会社の行動は、競争の保護に関する連邦法N135-11の1項、それを調整する業界団体のスケトウダラ漁業者協会の活動は同5項に違反しており、不当に製品価格を統制して市場を分け合っているカルテルの疑いがもたれている。
この事件にかかる調査は、ロシア漁業会社を実質支配し、ロシア海域のスケトウダラの漁獲枠を管理しているとされる“パシフィックアンデス”の問題に端を発し、今年5月から8月までの間、関係者を対象に抜き打ちで行われていた。
ロシア漁業庁は“パシフィックアンデス”を含め、外国企業がロシア漁業会社の資本に不当に参加している証拠が発見された場合、ロシア排他的経済水域における水棲生物資源の漁獲割当を否定する根拠になると指摘している。
なお、ロシアスケトウダラ漁業者協会は、同日付で、これらの疑いを否定する声明を発表した。
2012年10月19日 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[問題解決のため“パシフィックアンデス”と「ロシアの海」が合弁へ]
世界最大のフィレ製品取引業者の中国企業“パシフィックアンデス”(Pacific Andes International Holdings)は、ロシアの水産投資企業グループ“Русское море”(“ルスコエモーレ”「ロシアの海」)と主要事業を合弁で行う可能性がでてきた。
これは、ロシア漁業会社を実質支配し、ロシア海域のスケトウダラの漁獲枠を不当に管理していたとされる“パシフィックアンデス”の展開に関する問題を、ロシア政府が平和的に解決させるためのシナリオとみられ、先週(2012年10月7日からの週)、石油トレーダーで“ルスコエモーレ”主要株主のチムチェンコとロシア第1副首相シュバロフが、この件について協議したとされる。
ロシア側の提案には、中国側の加工施設の無料での使用等が盛り込まれている模様だ。
ロシア連邦独占禁止庁は、この合弁事業を行う場合、ロシア側が51%以上、中国側は49%以下に資本比率を設定すべきだとしている。
2012年04月26日 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア大手“ルスコエモーレ”「ロシアの海」が極東漁業参画へ]
専門家が、最近、中国人オーナーとの提携について極東漁業会社の調査を開始したことを示唆する一方、大手水産グループ“Русское море”(“ルスコエモーレ”「ロシアの海」)が、極東漁業会社から資産売却の申し入れを受けていることを明らかにした。
投資関係者は、この中国資本に関する調査が、同グループの資産入手コストを下げ、低下価格なものにすると指摘している。
大手水産グループ“ルスコエモーレ”「ロシアの海」は、かねてから極東漁業に関心をもっており、幹部関係者によれば、中国企業“パシフィックアンデス”(Pacific Andes International Holdings)に関する噂と、提携されていたとされる極東漁業会社への調査は、彼らの資産価値を削減させ、市場価値を下げる、安全な圧力ということができると語った。