2021年07月28日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[スケトウダラ国際市場動向 ロシア産冷凍製品 中国加工 EU市場]
世界のスケトウダラ生産350万トンの内、ロシアが180万トン、米国が150万トンを占めている。
ロシアは洋上でH&G(ドレス)を生産し中国へ輸出、中国が陸上でフィレ加工してEUへ再輸出、米国は日本へすり身として輸出することを、それぞれ仕向けの主流としてきた。
新型コロナウイルス(CV19)拡散防止対策以降、中国の冷凍水産物輸入規制により、ロシア産H&Gの輸出が極端に鈍化していると伝えられており、EUフィレ市場との相関動向を注目する必要がある。
今般、2021年1月-4月・5月の貿易情報が確認されたので、これをリポートする。
1 2021年1月-5月の中国の冷凍スケトウダラ製品輸入
①2021年1月-5月、中国のH&Gを中心とする原料ベースでのロシアからの冷凍スケトウダラ製品輸入量は、情報どおり前年同期の41万3,900トンから10万500トンに激減した。
②これを米国産が補填したわけでもなく、同国からの輸入も前年同期の1万4,000トンから5,900トンに減少した。
③さらに、韓国、日本からの輸入も3,000トンヴェルで前年と変化を示していない。
④ロシア産製品の中国の輸入平均単価はkgあたり1.19ドルで、前年同となっている。
2 2021年1月-4月のEUの冷凍スケトウダラ・フィレ輸入
①2021年1月-4月のEUの中国(主にロシア産H&G原料再加工)からの冷凍スケトウダラ・フィレ輸入量は4万750トンで、前年同期を7,250トン、15%下回った。
②これを米国産が補填したわけでもなく、同国からの輸入も前年同期の3万2,770トンで、前年同期を3%下回っている。
③さらに、自国でのフィレ加工を推進したロシア産の取引量も前年同の1万600トンとなっている。
④2021年4月、中国(ロシア産H&G原料再加工)からの冷凍スケトウダラ・フィレの数量が落ちているにもかかわらず、EUの輸入平均単価はkgあたり2.58ユーロで、前年同期を0.3ユーロ下回っている。
CV19による外食業界の弱まりが原因なのか、単価低下は米国産とロシア産についても同様となっている。
3 報告担当者仮説
①米国産の冷凍すり身の増産等、想定の範囲内の動向はあるものの、その他生産各国と市場の変化においてロシアと中国のH&G貿易ほど大きな変化は存在していない。
一方で、現時点において中国からEUへのフィレ供給量減は、これに対して劇的なものとは言えない。
中国加工フィレのEU利用者は冷凍食品メーカ(フィンガー・スティック・フライ等)業界で、出荷製品原料と末端冷凍食品との供給のタイムラグが作用している可能性があり、まだ数ケ月間、この動向を観察する必要がある。
②また、ロシアは国内外市場向けフィレの生産、アジア・アフリカ諸国等新規市場への製品供給に取り組んだが、今春のロシアAシーズン操業においても前年の80%の漁獲は行ったことから、中国再加工を待っている応分の在庫が、ロシア極東地方と、保税状態において韓国、あるいは日本に存在すると推察される。