2023年09月02日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#53 洋上風力発電と漁業 海外の経験 デンマーク事業者 米国でのプロジェクト相次ぐ頓挫 株価急落]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
デンマークの世界最大クラス洋上風力発電開発事業者“オーステッド” (Ørsted)社は、米国でのプロジェクトの頓挫が相次ぎ、コペンハーゲンに上場している同社株が急速に下落した。
2023年8月30日、決算会見で、米国で計画している洋上風力発電プロジェクトの価値を20億ドル減額せざるを得なくなる可能性があると発表され、同社株価は25%下落した。
世界の洋上風力発電プロジェクトは、タービンやその他のコンポーネントの購入コストの急激な増加に悩まされている。
この1ケ月前の2023年7月、スウェーデンの“ヴァッテンフォール”(Vattenfall)社は、英国イングランド東部ノーフォーク州沿岸沖合“ボレアス”洋上風力発電プロジェクトの開発を中止すると発表した。
これらの背景にも、原材料の鉄鋼、風力タービン自体に加え、タービンを取り付ける特殊な船舶費用など、あらゆるものの価格の急激な上昇と、融資条件のコスト上昇が存在している。
オーステッド社の財政難の情報は、米国ニュージャージー州沿岸地域の洋上風力エネルギー批判に拍車をかけることになる。
最近のモンマス大学の世論調査では、風力発電プロジェクトをめぐる議論において、市民の賛成支持が失われ、現在では民主党と共和党の党派によって賛否が大きく二分されていることが示されている。