2023年09月27日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#57洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 NJ州 洋上風力支持急落 複数調査で確認]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
米国北東部ニュージャージー州では、クジラの座礁問題等を受け、洋上風力発電プロジェクトに対する市民の支持が急落していることが複数の調査で確認された。
2019年の調査では支持が76%だったが、2023年8月に行われたモンマス大学の調査では54%まで低下、14%だった反対が40%まで上昇した。
2023年5月に行われたファーリー・ディキンソン大学の同様に調査結果が確認されていた。
更に、2023年9月に行われたストックトン大学の最新世論調査によると、洋上風力発電プロジェクトに対する支持は、2019年、特に77%を集めていた沿岸地域住民の間で急落、これが33%となっていることが確認された。
また、この最新世論調査によると、洋上風力発電開発事業者に減税を与えることへ、賛成39%に対し、反対が48%、12%が決めていないとの回答だった。
2023年6月30日、民主党の州議会議員らは、コストが急激に上昇する中、洋上風力発電プロジェクト“オーシャン・ウィンドI”の存続を図るため、デンマークの世界最大クラス開発事業者“オーステッド”(Ørsted)に対し、エネルギー税控除のより多くの割合を与えることを承認した。
これを受け、洋上風力発電反対グループの“ブリガンティン・ビーチを守れ”(Defend Brigantine Beach)と“私たちのニュージャージーの海岸を保護しろ”(Protect Our Coast NJ)は、2023年7月27日、同州南東部沿岸沖合に建設を計画しているプロジェクトの開発事業者に与えられる税減免が違憲だとして、訴訟を起こしている。
建設計画の洋上風力発電プロジェクト2件のうち1件について、デンマークの風力発電開発会社“オーステッド”(Ørsted)への約10億ドルの補助金(減税)を与える関連法の撤回を求めている。
原告側弁護士は、税の減免はニュージャージー州憲法に違反する一企業に利益をもたらすものだと説明し、関連法は違憲状態にあるとしている。
訴状は、オーステッド社がニュージャージー州公益事業委員会に対し、可能な限り低い電気料金を提供するために十分な資本を維持していると述べ、さらに税減免を必要としないと主張した上で、最初のプロジェクトである“オーシャン・ウィンドI”の権利を取得した等と指摘している。
“オーステッド”社への減免が承認されたほぼ直後、同じくニュージャージー州の洋上風力発電プロジェクトの承認を得ている別の企業も減免を望んでいる。
2022年12月からニュージャージー州とニューヨーク州の海岸でクジラの座礁が相次ぎ、洋上風力発電プロジェクト反対派は、これを、調査を行っていた船舶と作業に関連付けている。
また、洋上風力発電所開発のための調査活動で、爆撃のような音で海底を叩いており、激しい音がクジラの聴覚器に損傷を与える可能性があることが知られており、浅瀬への座礁の可能性が指摘されている。
更に、住民の多くは洋上風力発電プロジェクトが州の夏の観光経済に悪影響を与える可能性があると考えている。
洋上風力発電プロジェクトが州の大幅な雇用増加につながると考えている市民はほとんどいない。