2025年01月10日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[ポスト英国EU離脱 漁業交渉の年が明けた英国とEU]
英国とEUは、今年2025年、英国EU離脱後の関係協定の更新交渉をする必要があり、漁業分野が枠組み再構築の大きな試金石となっている。
英国労働党はEUと初めて本格的に交渉する準備を進めており、移民規制の緩和、ジブラルタルの将来、経済アクセスの拡大などに関する決定がすべて議論される可能性が高い。
英国のEU離脱による漁獲割当の譲渡は、2021年から開始されており、2026年半ばまで実行される。
譲渡のプロセスは(括弧内は全体に対する比率)次のとおりとなっている。
2021年:60%(15.0%) 2022年:70%(17.5%) 2023年:80%(20.0%) 2024年:92%(23.0%)
2025年:100%(25.0%)
非TAC魚種については、2012年から2016年の間に記録された平均漁獲量をベースに、2026年半ばまでに制限されることになっている。
EU離脱に関する2度目の国民投票と、欧州全体の関係強化を強く主張したことで政治家としてのキャリアが脚光を浴びたキール・スターマーは、首相就任以来EUとの関係再構築を目指しており、交渉における選択について厳しく精査されることになる。
2024年5月の英国とEUの合同漁業委員会の議事録によると、EUはすでに前英国政府に漁業に関する交渉を再開するよう圧力をかけていた。
英国とEUの両政府によって公開された当該議事録には、“EUは英国との協議をできるだけ早く開始することを主張した”と記されている。
貿易協力協定以来の数々の論争を経て、漁業分野の議論はEUの優先事項のトップになったように見える。
過去数年間、英国とEUの関係は比較的良好だったが、漁業分野は依然として物議を醸している。
2024年3月、フランスは英国が領海内で一部の操業を禁止したことに対し公式抗議を開始した。
デンマークとスウェーデンはともに、北海のドッガー・バンクでのイカナゴの漁獲を禁止するという英国の決定に異議を唱えている。
デンマーク外相ラース・ラスムセンは、この決定によりデンマークの漁業者が年間1,800万ユーロの損失を被り、他の関連産業にも打撃を与えると主張している。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ラスムセンはEU外交官に対し、事実上の漁業権の侵害を回避するために共通の立場を取る必要があると求めている。
一方、英国の漁業者は、スターマーが交渉を利用して英国漁船による英国産魚のさらなる漁獲の機会を主張してくれることを期待している。