2019年12月14日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[英国保守党総選挙勝利 EU離脱加速 厳しい漁業交渉が想定される]
2019年12月12日投開票の英国総選挙において、英国首相Boris Johnsonが率いる保守党が単独過半数議席を獲得して勝利した。
Boris Johnsonは翌13日、保守党政府が英EU離脱の完遂を付託された旨を宣言、来年2020年1月31日にEUを離脱するとあらためて表明した。
英国とEUの交渉は、離脱後から2020年12月末までの移行期間の間に行われることになっているが、自由貿易協定の締結には通常数年かかる。
最長で2年延長できる移行期間について、Boris Johnsonは延長しないと明言しているが、スコットランド漁業者連合会代表“Elspeth Macdonald”も国際年次漁業交渉の確定したスケジュールとの兼ね合いから、延長されることを危惧している。
“Elspeth Macdonald”は、現状、自国海域で生産されるべき水棲生物資源の60%をEU漁船が漁獲しているとして、共通漁業政策に基づく漁獲割当配分の不合理な不均衡を指摘、これを終了させ、英国沿岸海域の主権回復を一貫して要求してきた。
EU諸国は現在のように英国海域で操業できなくなるため、漁業は最も難しい問題の一つとなる。
双方は、おそらく漁獲割当交渉を行うことになるが、これは厳しいプロセスになると予想される。
英国の水産物輸出入業者は、英国海域をめぐる複雑な漁業交渉に加えて、国境を越えて水産物を輸送する方法を決定する交渉を注視している。
英国とEUが合意した新たな離脱協定案の最大の特徴は、北アイルランドに限り、関税手続きなどをEU基準に合わせた特別な運用をすることにある。
移行期間終了後に英国本土から北アイルランドに物品を送る際は、品目によって企業が輸入関税を支払うことが必要になる見通しだ。
関税手続き上の境界線は、北アイルランドとアイルランドではなく、同じ英国内の英国本土と北アイルランドの海上に引かれ、英国本土からの物品が北アイルランドにとどまれば、英国当局は企業に税を還付する。
一方、EU加盟国のアイルランドまで持ち込まれた場合は還付しない仕組みとなる。
(関連過去情報)
2019年10月27日 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[英国EU離脱 スコットランド漁船は北アイルランドに船籍を変え関税回避をする可能性がある]
英国首相Boris JohnsonはEU離脱について、大いなる海洋の富を享受する機会を得ることができると主張していたが、一方で、スコットランド水産物協会代表Andrew Charlesは、EU向けの輸出手続きにかかる経費が大規模な負担を与えるとし、スコットランド漁業者団体と違う立場を指摘している。
一方、Boris JohnsonがEUと合意した離脱後の条件では、北アイルランドは当面、関税同盟の規則に残ることとなっている。
スコットランド民族党議員Brendan O'Haraは、北アイルランドの漁業部門が単一の市場と関税同盟にアクセスできるのに対し、同じ海域で漁業を行うスコットランドの水産業はアクセスできないという懸念を表明した。
さらに、Brendan O'Haraは、スコットランドからEUに輸出される魚は関税の対象となるのに対し、スコットランド漁船が北アイルランドに船籍登録し、漁獲物を陸揚げさせ、加工せずにアイルランド共和国に輸送する抜け穴があり、これにより、漁獲物がEU関税から免除されることが可能になると加えた。