2020年04月02日
リポート:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア科学研究機関 日本海スケトウダラの産卵行動結果等調査]
全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ太平洋支部チンロは、北海道日本海側資源(日本海北部系群)と分布が重なるロシア側日本海(沿海地方・西サハリン)のスケトウダラの産卵行動結果等の調査のため、科学調査船“Зодиак”(ゾディアック)が2020年4月1日、ウラヂオストク港を出港したと発表した。
“Зодиак”は沿海地方海域で魚プランクトン等の調査を行い、当該資源の産卵行動の結果を把握する。
得られたデータと分析結果は2022年以降のTAC設定等に活用されることになる。
なお、ロシア漁業庁は2020年3月11日、日本海スケトウダラの2021年TAC設定を、今年2020年比26%増の2万7,200トンとする科学研究機関からの勧告を承認している。
2020年03月18日 日刊水産経済新聞
[ロシア 日本海スケトウダラTAC 21年も増枠]
TAC設定姿勢の違いに懸念 ライバルに経営的”リード”
北海道機船連によると、ロシア漁業庁は2020年3月11日、極東海域における2021年のスケソウ漁獲可能量(TAC)案(勧告)を承認した。
全体では20年当初比8%増の197万7000トンと増加、このうち北海道日本海側資源(日本海北部系群)と分布域が重なるロシア側日本海(沿海地方・西サハリン)の資源のTACは、上向きの資源評価を反映し、20年比26%増の2万7200トンと大きく伸びた。
TACは関係省庁の承認などを経て、例年秋ごろに最終決定される。
道機船連の原口聖二常務はこのニュースを受けてコメントを発表。
近年、横ばい、微増で推移する日本の日本海北部系群のTACの設定姿勢が、ロシア側に比べ「あまりに保守的」とし、「ライバル国業界にさらに経営的リードをとられる」と懸念を表明した。
ロシア側日本海のスケソウTACは16年には6520トンと日本側を下回っていたが、17年以降増加基調となり、20年は19年比12%増の2万1600トン、16年に比べ、3倍超のボリュームになった。
21年はそこからさらに2割以上伸びる見込みで、これで5年連続の増枠となる。
一方、道機船連の所属沖底船も利用する日本海北部系群のTACは、17年以降3年連続で6300トンに設定。
近年はロシア側同様、資源評価に上向き傾向がみられ、20年TACは4年ぶりの増枠(計6700トン)となったが、その増加幅は6%(400トン)にとどまった。
資源豊度が高いとされる16年級が今年、親魚として加入することなどを踏まえ、業界側にもう少しの"辛抱"を要請した形。
来年には漁獲量が1万トン台に回復するとの見込みも示されている。
ただ、原口常務は20年TAC設定に向けて行われた国との意見交換会(2月)で、近年の漁獲減により陸上加工場の生産体制が縮小しているとし、このままいくと「たとえ資源が回復しても有効活用ができなくなる」と指摘、経済・産業的観点を踏まえた早期の増枠を求めていた。
原□常務は今回のロシアの21年のTAC増枠案のニュースにより、資源評価を機動的にTACに反映させ、産業振興につなげるロシア側と、日本側のTAC設定姿勢の違いが改めて鮮明になったとの認識を表明。
「日本側のTAC設定は保守的すぎる。(ロシアとのTAC設定の)時聞的、数量的ラグ(ずれ)により、国際市場価格に影響を受ける当業界は、ライバル国業界にさらに経営的リードをとられる」と、危機感を表している。