連休の中日は、部屋にこもって仏像を彫ったり、
本を読んだりして、一歩も外へは出なかった。
浅田次郎の連作短編は、神の坐す御嶽山の神域と
神官屋敷で繰り広げられる物語が、7編の連作で淡々と語られている。
見えざるものを見、聞こえざる声を聞き、霊や穢れ、
験力の存在と、神のおわす山の人たちとの人間模様が、
浅田らしい暖かい目で描かれ、直木賞受賞作の「鉄道員」を髣髴とさせる。
この一編を読み終えるごとに、池上彰・佐藤優の
「新・戦争論」へ移った。
副題に「僕らのインテリジェンスの磨き方」と、うたっているように、
民族、宗教、歴史、政治、紛争などのテーマを、インテリジェンスの塊の二人が語り合っている。
池上は、東西冷戦が終わった時、新しい世界が来ると期待したが、
21世紀が「戦争の世紀」となったと語り
佐藤は、戦争と民族対立の時代は、20世紀で終わったと
言われているが、当面続くという意味で、「新・戦争論」としたとも言う。
インテリジェンス能力には欠けるが、身近に起こる紛争や
事件を見ていると、70年続いた平和が維持できるのかと不安に駆られる。
血なまぐさい現世から、神のおわす平和な異界へ転生しながら、
二冊を併読したが、こんな読み方も悪くはないと思った。