焼岳
立春の昨日は、日本列島が高気圧に覆われ好天が期待されたので、上高地へ出かけることにした。
家から安房トンネルを越えて、1時間足らずで上高地の入り口「中の湯ゲート」に着く。
冬季閉鎖中のため、ここから歩く事になるが、釜トンネルの中は所々に非常電話や火災報知器のライトがある以外、ほぼ暗闇状態で抜けるまで長く感じる。
旧釜トンネルの頃は、入り口が雪で埋まって、人が通れるくらいの穴が開けられ、中も漏水のため太いつららや筍状の氷柱があちこちにあり、怖い思いをした頃に比べれば今は難なく通過できる。
トンネルを抜けて真っ先に飛び込んでくるのは、噴煙たなびく焼岳である。
梓川を左手に見ながら車道を進んでいくと、大正池の向うに穂高連峰が聳えている。
このあたりはいつも雪崩が起こる場所で、案の定2ヶ所に立ち木を巻き込んだデブリが道をふさいでいた。
霧が立ちのぼり、霧氷の美しい大正池から遊歩道に入り、樹林帯を通って田代池へ向かった。
トレースがたくさんあり、そこを歩く分にはつぼ足でも雪に沈むことも無く、最後までスノーシューもアイゼンも使うことは無かった。
静寂の田代池は、霧氷が朝日にキラキラと輝き、幻想的な風景に、しばらく見とれていた。
ここから田代橋を渡り、梓川の左岸を通って河童橋に向かった。
河童橋から見る穂高連峰は、絵葉書的な美しさであったが、岳沢や山麓の雪は少なく4月頃の感じだった。
帰りは右岸の遊歩道を通り、大正池で車道に出て再びトンネルを歩いて中の湯ゲートに着いた。
帰途、安房峠の中腹にある一軒宿「中の湯温泉」に立ち寄り、湯船から穂高の白い峰に別れを告げた。
中の湯のご主人が、こんな雪の少ない年は初めてだし、去年の立春は-18℃であったが、今朝はプラス1℃もあったと驚かれていた。
上高地で会った砂防パトロールの人も、長年ここに来ているが、厳寒の上高地で雪も少なく暖かい陽気はおかしい。まるで春が来たようだ言っていた。
かつて、弁当のおにぎりがカチカチに凍って食べられなかったこともあったが、最近はそんな経験はしたことが無い。
最後の休憩地の大正池で、脱いだ手袋を忘れてきてしまったことを、トンネルの入り口まで気が付かないほどの暖かさだった。
山でも小さな異変が起こっている。