昨日は目まぐるしく変わる天候の中を、天生峠でスノートレッキングをしてきた。
飛騨河合と白川村を結ぶ天生峠は、冬の半年間は積雪のため閉鎖されている。
両白山地と飛騨高地の間にある峠一帯は、有数の豪雪地帯の上、小鳥川沿いに蛇行しながら走る国道360号線は、急峻な山腹をえぐった細い道で、山側は崖が覆いかぶさるように迫り、谷側も急角度に落ち込んでいる。
新緑や紅葉の時期に訪れるライダーからも、酷道と恐れられている難所である。
冬季の高山から白川郷へのルートは、国道158号線を利用して荘川経由で行っていたが、最近は高速道路が開通したので国道を通る車は激減した。
旧越中街道の天生峠越えの道も、いずれ消え去る運命にあるかも知れない。
麓の天生集落に車をとめ、登り4時間、下り3時間と読んで、車道を歩いて峠を目指した。
出発時は晴れていたが、西の空から灰色の雲が流れてきて雪が舞ったり、薄日が射したかと思うと強風が吹き付けたりと不安定な一日だった。
途中何ヶ所も雪崩の跡があり、デブリが45度の角度で道を塞ぎ、そのまま谷底へ落下していた。
不安定な雪は落ちてしまったと信じながら慎重に横切ったが、防護壁の太い鉄柱をへし曲げ、木をなぎ倒す雪崩の威力に足がすくんだ。
標高1.000mを越すあたりから雪も深くなり、ラッセルに息が上がり距離が稼げない。
スタートから4時間を過ぎたあたりで前方を見上げると、天生峠とおぼしき鞍部が望まれたが、時間切れでUターンすることにした。
峠を目前にして撤退に未練は残ったが、横殴りの雪と鼻水が凍る寒さで気力も萎え、名だたる豪雪地帯の手強さを痛感した。
強行していれば、今頃は峠に棲む妖艶な美女にすり寄られ、一緒に深い雪の下で寝る羽目になっていたかも知れない。