日本の太平洋岸を流れる暖流の黒潮が南に大きく迂回する「大蛇行」が続く中、黒潮が四国沿岸から離れる変調を起こし、瀬戸内海に流入する海水量が大きく減少していたことが7月21日、海洋研究開発機構の美山主任研究員らの調査で分かった。
赤潮の発生時期を遅らせるなど、生態系にも影響を与えている可能性がある。
2017年から続く現在の大蛇行は観測史上最長となっており、2020年ごろからは四国沿岸から離れる異例の状況が長期化しているという。
黒潮大蛇行を巡っては、関東などで夏の高温多湿化や大雨など気象への影響も大きいとされる。
また、黒潮の続流が北上して東北沖の海水温を上昇させ、サンマなどの不漁にも影響を与えているとの指摘もある。
美山氏は「西日本側への影響のメカニズムはこれまでよく分かっておらず、瀬戸内海への海水の流入が減少している状況が明らかになるのは初めてだ」と説明。
養殖産業や海洋ごみの滞留などへの影響も懸念されるとした。
美山氏らは、高知県が足摺岬沖に設置したブイの流速データや、海上保安庁の計測に基づく黒潮の流路データ、衛星や船舶のデータを取り入れ独自開発した海洋モデルを解析。
その結果、2020年ごろから、愛媛県と大分県に挟まれる豊後水道に向かう流速と、瀬戸内海を西から東へと進む流速が、いずれも大きく低下していたことが分かった。
瀬戸内海では通常、豊後水道から海水が流入し、和歌山県と徳島県に挟まれた紀伊水道から出ることで循環する。
瀬戸内海への海水流入量も大きく減少し、循環に影響が出ているとみられる。
豊後水道周辺では2020年、養殖業にも影響を与える有害なカレニア赤潮の発生が観測史上最も遅かった。
美山氏は暖かい黒潮の流入量が減ったことや、天候不順で海水温の上昇が遅れたことが大きな要因だと指摘。
「瀬戸内海では潮流の変化によって、養殖する貝に病気が広がったり、海洋ごみの滞留が問題になったりしているとの報告もある。
海水流入の減少が関係している可能性があり、影響の研究を進めていく必要がある」とした。
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