香港で次期行政長官選の民主的な実施を求め、約2ヵ月半続いた大規模デモは12月11日夜、事実上収束した。
具体的成果はなく、政府トップに民主派が当選を目指せる「真の普通選挙」の道は限りなく険しい。
デモを主導した学生への中国の容赦ない締め付けも必至で、今後の闘いには試練が待っている。
だが政治に覚醒した若者を先頭に最大20万人が参加した今回のデモは改革の芽となり、将来の民主化の力になることは確実だ。
選挙制度案は香港の立法会が3分の2以上の賛成で可決する必要があり、改正の成否は立法会にかかっている。
立法会で3分の1をやや上回る勢力の民主派議員は、来年夏までに行われる予定の投票で否決する構えを見せる。
ただ、制度改正が成立しないと普通選挙自体が実施されず、市民は投票機会を失う。
その場合、民主派が批判を浴びかねず、否決はもろ刃の剣だ。
しかし、中国の姑息なやり方には腹立たしい。
今回のデモの背景には香港で拡大する貧富の格差がある。
香港メディアによると、約720万人の人口のうち5分の1は貧困層。
上位10%の富裕層が富の77.5%を支配するいびつな社会構造だ。
中国マネーの不動産投機などで住宅価格は上昇を続け、若者は将来への不安を募らせる一方だ。
長引く幹線道占拠による交通渋滞で日常生活に支障を来した市民は、多くがデモの不支持に回った。
しかし学生ら若者の支持は一貫して変わらず、深刻な社会の亀裂も生み出した。
若者らは、既にネットを駆使して世界各地の草の根運動の研究を始め、香港政府に対しては税金不払いで抗議を続ける方法を検討。
さらに立法会の投票を次の「勝負どころ」と見定め、議員や市民を巻き込んだ世論形成を進めて否決を目指し、2022年の次々回長官選での悲願実現を狙う思惑だ。
だが、香港誌幹部は「中国(学生らの民主化運動を武力弾圧した1989年の)天門事件後と同じ対応を取るだろう」と分析。
運動のリーダーを弾圧する一方、デモ参加の不満にある程度応えて離反させるアメとムチの戦略だ。
中国は既に学生団体幹部の「ブラックリスト」を作したとみられ、幹部らは中本土への入境を拒否されている。
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