ジャンさんが北区にいらっしゃるというので、はてどのお店にお連れするべきか、それとも既にお目当てのお店があるのか、あれこれと思い悩んでしまった。とりあえず、彷徨い歩くことがないよう、目ぼしいお店はマーキングしておこうか。
自分の好きなお店にお連れしよう。まずはそう思った。立ち飲み屋を選から外すと、候補はたった3店になった。東十条なら、「田や」か「天将」、赤羽なら「まるます家」かな。あ、「天将」は開いているか分からないし、「まるます家」は3杯飲んだら帰らなきゃならないし。これはもう、「田や」で決まりだな。
約束の時間の10分前に待ち合わせ場所に着くと、既にジャンさんはそこにいた。幸いなことに自分が改札を出て、ズンズン近づく写真は撮られることはなかった。
「ジャンさん、どこか行きたい店、ありますか」と尋ねると、「ハムカツとポテサラがあれば」という。あれ、「田や」にそのメニュー、あったかな。ただ、ひとつ言えることは、確実に「田や」にはスパムはないということだけだ。
「田や」は幸い、空いていた。カウンターに陣取り、生ビールの中ジョッキをオーダーした。「生中」は巨大だった。通常の店なら大生である。そういえば、自分は「田や」で生ビールを飲んだことがなかったっけ。そうか、そうか、こんなに大きかったか。
ジャンさんは「ニラ玉」、自分は「栃尾揚げ」。
多分、ファーストオーダー(スターウォーズではない)って、酒飲み渾身の思惑と欲を示すものじゃないかしら。ジャンさんは、これで炒めもののレベルを確認し、自分は普段食べられないものをと、注文した。いや、マインド的には、「ぬた」をオーダーしたかったが、日本酒を後まわしにすることで「ぬた」も次点にした。
ジャンさんは居酒屋も旅館も、ほぼ定点観測の人である。決まったところを訪れて、時間や季節の移ろいを感じる。それはとても羨ましいことだった。人は2つの人生を生きられない。だから、自分が持ってないものに憧れ、羨望する。新規開拓ばかり、続ける自分には持ってないものだった。
ジャンさんは予想通りというか、お約束というべきか、『焼きそば」をオーダーした。
そして、とうとう見てしまった。麺をリフトアップする撮影の様子を!いや、かねがね不思議に思っていた。あれはどうやって撮影しているのか。利き手で麺をリフトアップさせ、利き手ではない手で撮影をする。その瞬間を目の当たりにしただけで、今夜はもう満足だ。
そして、日本酒にスイッチ。これで、今夜はもうゲームオーバー確定である。あとは記憶をなくすのみ。案の定、自分のメモリ機能はオフラインとなった。「生姜焼き」はまだ微かに記憶があるが、「どぜうの唐揚げ」はすっかり記憶が抜け落ちている。
ジャンさんとどこで別れたか、その後、どのような道を辿り、家路に着いたか。全くもって分からない。
「楽しかったんだね」。
翌日、かみさんは怖いほど優しかった。
カニクリームコロッケは?
>居酒屋も旅館も定点観測、
これは自己紹介に使えそうないい比喩ですね。自分を相手に説明する際に。
そこに行けばそれがある、その人がいる、会話ができる、そういうのが好きなんですよ。次回行った時には女性スタッフの腕の怪我が完治していると思うので「怪我治ったんだ?」って言うでしょう。
まるますや、3杯までなんだ。でもそれくらいでもいいですよ。鯉の洗い大好きだし。
カニクリームコロッケ、微かに記憶があります。画像もありますし。
>そこに行けばそれがある、その人がいる、会話ができる、そういうのが好きなんですよ。
いいですね。自分の場合、「光栄軒」が唯一、そういう場になっています。3rd placeに昔から憧れます。
「まるます家」、鰻も兜焼きもうまいですね。
モノノフさん。
ジャンさんに撃沈されました。たくさん食べたと思うのですが・・・(記憶なし)。