かつてこれほどの規模で浮世絵が集められただろうか。
世界各国から340点の作品が一堂に会す、こんな機会は恐らく、今後もしばらくないだろう。
広重の「名所江戸百景」が好きだ。
大胆な構図と色彩、そのバランスとイマジネーション。
例えば、「おおはしあたけの夕立」。
橋が右上がりに展開するのに対し、向こう岸の地平は何故か右に下がる。だが、その構図はどういうわけかバランスがいい。
それよりなによりも雨の描写だ。
これはまさに漫画。いや、漫画がその影響を受けたというのが正しい。
漫画的といえば、北斎の「富岳三十六景」。あの有名な「神奈川沖浪裏」。
大きな波が押し寄せるあの波しぶきだって、描写そのものは写実的ではない。しかしながら、大波が寄せる姿に異論はなく、実はそのリアイリティは確信的に迫ってくる。
今回、初めて見た国芳の「相馬の古内裏」も浮世絵を通り越し、もはやポップアートのような趣さえ見せてくれる。
いやいや、国芳の「其のまま地口 猫飼好五十三疋」は、アートという大上段に構えることなく、親しみやすい当時の浮世絵の匂いを今も残して語りかけてくるようだ。
デザインの部分では、現代の漫画、アートデザインの入り口を垣間見るようだ。
もしかすると、国芳にもビリーバットが見えていたのではないかと勘繰りたくなる。
これだけの作品が展示されると、どうしてもマクロ的感覚で作品を見てしまう。
本当はもっとじっくりと見るのが好きなんだけれど。
しかしながら、とにもかくにも、圧倒的スケールで迫ってくる、日本の風俗画の黎明を見たような気がする。
いい仕事していますね。
じゃ、自分もお土産持っていきます。